We shall overcome ☆沖縄からのグローカルヒストリー☆

琉球大学西洋近現代史研究室を担当する池上大祐の教育・研究活動ブログです。アメリカと太平洋島嶼地域との関係について、(脱)・(新)・(核の)植民地主義の観点から研究しています。また、沖縄で西洋史やグローカルヒストリーを学ぶ意義・方法について歴史教育実践を通じて追求していく予定です。なお本ブログの記事は、あくまでわたくし個人の意見であり、所属先の方針や考えを代表するものではありません。

『遠隔で作る人文社会学知』に寄稿しました

久々の近況報告です。今学期に担当する授業は、少人数の科目が多く、オムニバスで参加している講義以外は、すべて対面で行っています。ただ、コロナ対策として遠隔を希望する学生に対しては、同時にオンデマンド講義も作っていますので、それがやや大変ですが、前期に試行錯誤しながら培った遠隔講義スキルを活用しつつ、なんとか対応できていると思います。前期に私が担当した遠隔講義の実践報告については、下記の電子書籍に書かせていただきました。1200字程度ですが、何かしらの参考になればと思います!

大嶋えり子・小泉勇人・茂木謙之介編著
『遠隔でつくる人文社会学知―2020年度前期の授業実践報告―』

sites.google.com

 

後期の講義の一部をすこしだけ紹介します。

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専門科目「世界史実践演習(いわゆる史料講読)」では、「戦争抵抗者連盟(WRL)」の創設にかかわった、Jessie Wallace Hughanの思想と行動を描いている、Radical Pacifismの第1章を読み進めています。両親や姉妹も含めてラディカルな家族で、ヘンリー・ジョージの影響も多大に受けていたそうです。

専門科目「世界史研究」では、『アメリカニズムと「人種」』をテキストとして、報告担当章を学生に割り振って、学生による報告⇒学生同士の討論⇒教員による補足・解説という流れで、進めています。第1、2章を読み進め、黒人奴隷制の廃止と「人種」の関係について考察しました。まあ、僕の解説もまだまだですね・・・。もっと通史的な理解を深めないといけません。

共通教育科目「西洋の歴史と文化」では、アメリカ史を軸として、戦争記憶、先住民、人種、ジェンダー、経済、対抗文化の6つのテーマを扱うこととしています。戦争記憶については、硫黄島とグアムを事例に、過去を記憶(顕彰)することの政治性についてお話しました。

ゼミでは、卒論指導と並行して、共同研究「琉大の歴史」(仮称)にようやく着手しはじめました。コロナによって例年よりは遅れていますが、できる範囲で、よりよい成果を出してもらいたいと思っています。さて、どう世界史につなげますかね・・・(地獄のミサワ風に)。ちなみに、ゼミでの雑談で「おじさん構文」なる概念を知りました。大変勉強になりました。

大学院の授業「太平洋島嶼現代史実践演習」(西洋史学演習と併設)では、マーシャル諸島内のクワジェリン環礁の歴史をマーシャル、日本、アメリカの関係から考察したCoral and Concreteの第1章を精読しています。マーシャル諸島共和国からの留学生(専門は環境経済学)も受講しているので、私の拙い英語で母国での生活や文化などを質問しながら、進めています。

 

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10月も過ぎ去ろうとしています。いろいろと忙殺され、研究室はもはや「事務室」です。せめて自宅の書斎で研究を・・・と思っても、その一歩手前のソファーに沈んでしまいます。結局は、喫茶店の力を借りてすこしずつでも研究を進めるしかないようです(ただ意思が弱いだけか・・・)。ちなみに最近のお気に入りは、浦添パルコシティ1階の上島珈琲店。海が臨めて落ち着いた雰囲気でとても良いです。週末は、論文をできるかぎり書こうと思います。