We shall overcome ☆沖縄からのグローカルヒストリー☆

琉球大学西洋近現代史研究室を担当する池上大祐の教育・研究活動ブログです。

若手部会→日本社会科教育学会→若手部会

怒涛の週末でした。

11月30日は九州西洋史学会若手部会歴史教育企画で、新指導要領を意識した2冊の歴史教育本の紹介(理論編)と、 コンラートの『グローバル・ヒストリー』の紹介も挟みつつの歴史総合と探究科目の異同を意識した授業紹介(実践編)がなされました。学習指導要領の「文法」に慣れておらず(ただ読解力がないだけ?)、総合と探究の違いがこれまで実はよくわからないままでしたが、今回かなりクリアになってきました。ポイントだけ言うと、前者は「変化」に、後者は「展開」に力点があるとの事。さらに前者は、世界とそのなかの日本の「相互」的関係に、後者は、日本/世界の歴史を世界/日本の歴史に「関連付け」ることに、ポイントがあるようです。どの発表も勉強になりました。

今後は、もっと教職を目指してる学生が参加・発表しやすくなるように、例えば「学習指導要領を読み合わせよう!」とか、「私の模擬授業、受けてください!」的な企画もありかなーと思ったり。もっと学生目線に立って、教育実習や教採試験を控えてる学生のニーズを掴んでいきたいと思います。

昨日の午後は日本社会科教育学会で、沖縄戦学習と日本安保学習についてに授業実践へのコメント役を担当。社会科教育学はど素人で何も知りませんが、 よかったです、で終わるのもなんだかなぁと思い、議論の呼水にするために、疑問に思ったこと(反実仮想や質の違う戦争の比較など)をはっきりと言うことに徹しました。フロアにどこまで響いたのか分かりませんが、上原専禄を尊敬している気持ちだけは伝わったかなと思います。ちなみに、口頭での説明で、口を滑らせて、カントの『永遠の平和のために』は30年戦争の経験を踏まえている、と言ってしまいましたが、カントが見てたのはナポレオン戦争でした。30年戦争を見てたのはグロティウスでした(個別に指摘くださった方、ありがとうございました。帰宅して調べなおしてミスがわかりました)。

で、学会での登壇終了後、若手部会研究報告会に合流。ほとんど聞けませんでしたが、ゼミ生たちの勇姿を見届けることはできました。いろんな大学からエントリーしてくださり、ありがとうございました。

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あ、しまった。紀要原稿の締切が11月末だった💦ということで今日は11月32日(長い11月)と思い込んで、乗り切ります💦マダ12月ジャナイヨー。

札幌滞在記

札幌滞在中です。今日、沖縄に戻ります。

おとといの日本国際政治学会「部会2 アメリカ政治・外交への接近法」での発表を無事終えることができました。私の報告で扱ったグアムの「国際的にみればアメリカ国内、国内的にみればアメリカ国外」というあいまいな「境界」性を、アメリカ政治・外交研究に位置付けていくべきか、という論点が少しでも同部会に参加くださった方々にとって、何らかの考えるヒントになれば幸いです。あと先ほど、ホテルの朝食会場で、大学院時代の後輩とばったり再会。旧交を温めました。お互い今後も頑張ろう!

おとといの報告時間まで時間がありましたので、幌北橋駅近くの札幌護国神社に行ってきました。県外出張の際は、かならず近隣の慰霊碑・戦跡をめぐるというミッションがありますので、今回もそれをしっかり実践。沖縄戦戦没者慰霊碑をはじめ、アッツ島やメレヨン島戦没者の慰霊碑など、多くの慰霊碑が建立されておりました。

2日目の昨日はちょっと時間をつくって、「ウポポイ民族共生象徴空間」に行ってきました。札幌駅から白老駅まで特急で片道約1時間。思いのほか行きやすかったです。博物館展示も、言語学民俗学的な展示をべースとしつつ、通史パネルも加わっていろいろと勉強になりました。シャクシャインの戦い、クナシリ・メシリの戦いの説明を聞くと、「開拓」の名の下に現地の文化を奪っていったわたしたち「和人」の傲慢さに頭を伏すしかありません。これは私が「入植」している沖縄でも、グアムでも言えることです。

また、昨夜は北海道の高校の先生方と交流する機会もいただき、いろいろと刺激を受けました。歴史教育活動はもうライフワークですね。

 あと、しっかりご当地グルメも堪能しました! 

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今年のビッグイベントの一つが無事終わりました。再来週は日本社会科教育学会での登壇を控えていますが、それを終えるとあとはひたすら原稿書きの日々です。もう当分は包括的・論点提示型の原稿は書きません(書けません)。史料の向き合う日々を取り戻します。

 

西洋史ゼミ研修@コザ!

今年の西洋近現代史ゼミ共同研究のテーマは「戦後コザのグローカルヒストリー」。そこで先日10日日曜日、コザを探索してきました。

沖縄市観光協会が主催するガイドツアーにも参加して、ミュージックタウンを出発点としてゲート通り→ヒストリート→沖縄市立図書館建物屋上→パークアヴェニュー(BCセンター通り)→パルミラ通りというルートで約1時間20分ほど色々とユーモアを交えて解説いただきました。コザ事件の様子も当時見たことがあるそうです。

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ガイドの方としか普段は入れない沖縄市立図書館のある建物屋上から臨む嘉手納基地。右側奥に滑走路、左側には米兵の住宅が見えます。「道の駅かでな」の反対側の光景ですね。

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ゲート通りの看板からも「異国文化」を感じることができます。マルコムxの下にジャマイカの国旗も描かれてて、??となりつつも、描かれた時期が違うんだろうなぁと勝手に納得しました。

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ちなみにゲート通り沿いのこのライブハウスでは、とても上手なクイーンのコピーバンドの演奏が聞けるらしいです。

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ガイドのジンさんとの集合写真!本当にありがとうございました。

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ツアーガイドの後は、タコライス発祥の店「チャーリー多幸寿」で昼食。日曜日の昼ということで行列でしたが、並んで正解、とても美味しかったです。なお沖縄タコスの歴史については、ヒストリートで恵贈いただいた『Koza Bunka Box』最新号に論文が収録されています(関連の新聞記事)し、『英霊』の翻訳者の宮武実知子さんによる、創業者への聞き取り連載記事「チャーリーさんのタコスの味―ある沖縄史」(『考える人』[WEBマガジン]、2016年)もネットで読めます。とても参考になります。

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ちなみにチャーリータコスさんの近くに小さな戦争慰霊碑もありました。

それから、沖縄市立図書館郷土史コーナーでの文献調査→ヒストリート再訪→コザ十字路近くの銀天街へ。

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銀天街はかつての黒人街ですね。なかを歩いてみただけでは、当時の痕跡とかを見つけることができなかったので、当時の地図をもとに場所を同定していく作業が必要でした。これはちょっと準備不足でした💦

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最後の訪問場所はプラザハウス。日本初のショッピングモールとのことで、ちょうど今年で開業70周年。現在開催中の70周年企画展担当の方にお時間を取っていただいてプラザハウスとその周辺の写真を見せていただきながら解説いただきました。上記はプラザハウス3階の壁に大きく引き伸ばされたプラザハウス周辺の写真。右奥は当時は米軍のゴルフ場。今はライカム・ショッピングモールになっています。

最後はみんなで、プラザハウスから近い、「パブラウンジエメラルド」でステーキを食べました!とても美味しかったです(この時はスマホの電池が切れてたので写真が取れず残念)。

 

という感じのコザ研修でした〜。共同研究論文作成の糧になればと願っています。

 

 

【更新】九州西洋史学会若手部企画(第25&26回)の案内

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九州西洋史学会若手部会は、

第25回11月企画(歴史教育)→11月30日

第26回12月企画(研究報告)→12月1日

にオンラインで開催します。

第25回の方には私もちょっとだけお話しします。教職課程の学生の方も、 ラジオやツイキャス感覚で、ぜひとも気軽にご参加くださいませ。

その翌日の12月1日には第26回若手部会研究報告会が開催されます!!こちらは、西洋史で卒論執筆を目指す学生・院生の皆さんで切磋琢磨する場です。

もちろん、九州圏外の方も、ベテラン勢も大歓迎です。ただし、「小さな芽にバケツで水をやる」ような発言だけはご遠慮いただく方針です。「若手部会」の趣旨を大切にしていただけますとありがたいです!

『アジア系アメリカを知るための53章』

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明石書店のエリアスタディーズの新刊が出ました。ご縁があって、私もグアムの日系人についての章を書く機会をいただきました。一から勉強しての執筆でしたが、なかなかピタッとはまる先行研究が予想以上になくて苦労しました。グアムの地元紙記事やグアムぺディアなどを駆使しつつも、以下の2冊がなければ構想もままなりませんでした。ぜひ以下の本も併せて手に取っていただきたいです。

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先週は、ショスタコーヴィチ研究を頑張ってる修士院生の発表会でした(一人5分だけだけど…)。今週末の土曜日は4年ゼミ生の卒論中間発表会で、ハプスブルグ帝国史、英連邦史、ホロコースト記念碑論争研究について復習せねば。日曜日は3年ゼミ生(2年生も)と、ゼミ共同研究のテーマであるコザのフィールドワークです。テーマの幅が広うございます💦日々てんやわんや。

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癒しのハーゲンダッツ。去年もこれ食べてまじで美味かったので今年も所望。通年販売は無理なんかなー。

西洋史研究室のなかの沖縄戦研究

本日は、沖縄戦若手研究会の『続・沖縄戦を知る事典』合評会と吉浜忍先生を偲ぶ会の両方に参加してきました。合評会では、7月に琉球新報に書いた同書の書評と、2021年に神戸大学附中等学校での沖縄戦についてのコラボ授業(元祖『沖縄戦を知る事典』)について紹介しました。今後の取り組みとしては、コンパクトな『沖縄戦史料集』を編むのもアリかも、とささやかながら提案してみました。もしくは、言いそびれたけど『沖縄戦のなかの世界史』とかも面白いかなと。

西洋史研究室の看板を背負いながらも、アメリカ太平洋史を専門研究分野とし、戦争記憶研究や平和研究にも携わっている以上、「沖縄戦研究」も卒論指導の対象にすべきかかと考えています。過去にも、戦後沖縄の米軍基地問題や、在沖縄アメリカ兵のベトナム反戦運動で卒論を書いた卒ゼミ生もいます。最低限、洋書か英文史料を使うことを前提としながらも、「アメリカ視点である」ことは問わず、沖縄戦研究をしたいという若い層をしっかりと受け止める義務はありそうです。教育学部以外で中高の社会科教員免許がとれるのは「国際地域創造学部地域文化科学プログラム」だけだからなおさらです。学部教育では裾野を広げることが大事。大学院では、沖縄戦研究専門家の研究室の門をたたいたもらえれば。

今、沖縄戦の時代も含めたかたちで、戦後アメリカとグアム・沖縄との関係を通覧する本を書いているところで、沖縄戦についての論文も今後すこしは書くべきかとも思って負います。

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2025年度からは、西洋中世史の先生の退職に伴い、私の西洋史に関する卒論指導の範囲は全時代に広がります(吸い上げポストなので後任はとれません)。古代ローマ史や中世フランス史とかも指導対象になってきます。西洋史の講義では、今後は、地中海史の通覧(太平洋はどこに💦?)だとか、「戦争の世界史」とか「帝国史」とかでなんとか工夫しながら、古代~現代をカバーできるよう組んでいく予定です。岩波世界歴史講座を活用するのもいいですよね(比重はどうしても近現代に偏ることになるは思いますが)。

 

 

「栄町共同書店」の箱店主になりました⭐️

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安里の栄町市場内に、「栄町共同書店」が10月1日からオープンします。地域の自治を実践する取り組みに共感し、私も箱店主として出店いたします。先程、研究室に残っていた、自分で買い取った分の自著もしくは編集に関わった書籍を配架してきました。

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屋号を「カルチエ・グローカル」にしました。福岡での「修行時代」に経験した、大学と地域をつなぐ活動名をふと思い出して、これしかないと。自分で製本した私家版も自由に配架できるので、ゼミ活動の書籍化は、市場ルートに乗せるのではなく、この活動の一環で目指していけるかなとも思っています!

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なんだかんだで栄町市場に行ったのは初めてでした。いろんな店があるんですね。11月の学会報告が終わったら、ゆっくり散策したいです。