We shall overcome ☆沖縄からのグローカルヒストリー☆

琉球大学西洋近現代史研究室を担当する池上大祐の教育・研究活動ブログです。アメリカと太平洋島嶼地域との関係について、(脱)・(新)・(核の)植民地主義の観点から研究しています。また、沖縄で西洋史やグローカルヒストリーを学ぶ意義・方法について歴史教育実践を通じて追求していく予定です。なお本ブログの記事は、あくまでわたくし個人の意見であり、所属先の方針や考えを代表するものではありません。

西洋近現代史ゼミ研修旅行(2)ー名護巡検

伊江島巡検に続いて、名護巡検編です。

 

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初日9日は、ホテルチェックインまで時間に余裕があったので、月曜日でも開いている「名護民俗資料館」に行ってきました。運営されてる方が自分でご購入されてストックしてきたものーゼンマイ式の蓄音機、船の汽笛用に使う鞴、古いカメラやミシン、農具・民具などーが展示されている本館や別館として戦争資料館もあり、その2階で沖縄戦についての太平洋戦争のドキュメンタリーDVDも見せていただきました。今後は、1945年の沖縄戦の時期の新聞記事を全国から集めて展示できればと、構想中のようでした。

 

 

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11日は愛楽園交流会館を訪問し、ハンセン病をめぐる沖縄戦・戦後史について資料館および園内見学を通じてまなびました。私は何度か訪問していましたが水タンクは初見でした。沖縄戦で、米軍機からの銃弾跡が生々しく残っています。

一番下の写真が納骨堂です。同じ時間に訪問されていた大谷大学歴史学科の方々と合同で、愛楽園創設の祖である徳島出身の青木恵哉(けいさい)についてや、堕胎についての解説を拝聴しました。

 

他にも、戦後の愛楽園入所者の生活を献身的に支えたスコアブラントの記念碑もあり、世界史との接続可能性を学生たちも実感したようです。

https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/hansen/airakuen/site/information/information03.html

 

案内の締めくくりは、園内に創立された「澄井小中学校」の碑。園外にある小中学の「分校」だと、本校の生徒も「ハンセン病」であるかのように見られてしまうことを恐れて、周辺住民からの反対があったという。また、ここで成績の良かった生徒が読谷高校を受験した際、病気を理由に不合格にされた、ということもあったとのこと。差別や偏見というものは、個人の無知や不勉強さだけに帰結するものではなく、地域社会、学校、教師という社会システムによっても補完されていく、という一例を垣間見た。特に教職を目指す学生には、今後自分自身の教師像を構築する中で、常に念頭においてもらいたい事実です。

 

最後に、初めてゼミ生を辺野古テント村に連れて行きました(写真なし)。辺野古新基地建設を世界史・日本史の文脈に位置付けた解説をしていただいた上で、今後の政府や知事の動きについての展望についても触れていただきました。また、ゼミ生からの質問(同世代に伝わる言葉を探したいが、いかにして?という主旨)に対しても、基地問題を自分たちの生活に関わる身近な問題に引きつけて考えることの重要性について共有することができました。解説における事実関係を知識として捉えるだけではなく、解説してくださった方の問題意識がどこにあるのかを読み取ろうとすることも大事です。「聞く」という技術向上が今後不可欠ですね。

 

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名護の夕食でお世話になった居酒屋です。最初の二枚は初日に行った「春海」さん。名護では名物のヒートゥ(イルカ)炒めを食べてみたけど、私には合わなかった…。二日目は海辺に近い創作居酒屋で、夕暮れの光具合がとても鮮やかでした。写真撮り忘れたけど、辺野古近くの二見そばにも行きました。ゆし豆腐入りそばは初めてでしたがとても美味しかったです!なお、名護グルメのオススメもいろいろご教示頂きましたが、行程上行くチャンスがなかったので、次の機会に行ってみたいと思います。

 

(おまけ)

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二日目の居酒屋の入り口にあった扁額。「和は良酒を醸す」という言葉は『夏子の酒』でも出てきます。ゼミにおける共同研究にも言えることなのかもしれません。ゼミ研修を総括する言葉のようにも、終えてみてから、写真を振り返る中でじわじわ感じているところです。