We shall overcome ☆沖縄からのグローカルヒストリー☆

琉球大学西洋近現代史研究室を担当する池上大祐の教育・研究活動ブログです。アメリカと太平洋島嶼地域との関係について、(脱)・(新)・(核の)植民地主義の観点から研究しています。また、沖縄で西洋史やグローカルヒストリーを学ぶ意義・方法について歴史教育実践を通じて追求していく予定です。なお本ブログの記事は、あくまでわたくし個人の意見であり、所属先の方針や考えを代表するものではありません。

琉球沖縄歴史学会学生報告、無事終了!

先日の11日は、琉球沖縄歴史学会の学生報告会でした。3年ぶりの対面復活でした。5本の報告が並び、うちのゼミ生も登壇の機会をいただきました。こだわって一つのことを懸命に掘り下げる研究報告はやっぱり聞くのが楽しかったです!どれもとても良かったです。

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共同研究「染織文化のグローカル・ヒストリーー八重山ミンサー織を中心にー」は、まずイカットロード論をもとに前近代における染織のアジア地域からの伝播(グローバル)を概観し、次に近代において日本に併合され琉球文化に「古来の日本」を見出そうとする文脈での琉球文化の「発見」を試みる柳宗悦ら民藝協会の動向(ナショナル)を紹介。最後に戦後沖縄の染織の復興過程及び伝産法による「八重山ミンサー織」の伝統産業指定化(ローカル)について扱いました。

この分野は私もど素人ですので、多くの事実関係は学生自身が頑張って調べれてくれた成果そのものです。報告ペーパーの筋立てや段落のまとめ方などの「見せ方」については直前まで私があれこれ修正を要求して改稿作業が大変だったかと思いますが、苦労した分、いただけた質問やコメント(ローカルな主体性、近代化、市場の問題など)のありがたさを一層身にしみたのでは、と思っています。終了後の打ち上・・・もとい「反省会」では、より高級で中国への献上品として使用された「上布」を扱うとよりアジアとの繋がりが見えてくる、という助言もいただき、染織文化は一回限りではやはり扱いきれないテーマだとその奥深さを改めて知ることができました。今後の共同研究では過去のテーマを引き継いでさらに深める、という方法もありかもしれません。

何よりも、この作業を「西洋史」ゼミ生が実施している、という事実自体に意味があるという点も強調しておきたいです。こうした毎年実施している共同研究活動の実践紹介の概要は、近刊の『七隈史学』最新号に収録されますので、今後ぜひそちらもご参照いただければ幸いです。

加えて、3年次の卒論構想発表の機会もいただき、沖縄でのベトナム反戦運動を米兵の視点から考察することについて、色々コメントをいただけました。4年次は就活や公務員試験等で忙しくなるのがわかっているので、卒論の準備の肝は「3年次の頑張り具合」であるといっても過言ではありません。

大学生時代、民間への就活に一切興味が持てなかった私自身に就活のアドバイスなどできるはずがありませんので、とにかくうちのゼミは「研究活動」に軸足を置いていきます。それによって「何ができるようになるのか」、学生自身で見つけてもらいたいです。それが大学の本質であると信じています。