We shall overcome ☆沖縄からのグローカルヒストリー☆

琉球大学西洋近現代史研究室を担当する池上大祐の教育・研究活動ブログです。アメリカと太平洋島嶼地域との関係について、(脱)・(新)・(核の)植民地主義の観点から研究しています。また、沖縄で西洋史やグローカルヒストリーを学ぶ意義・方法について歴史教育実践を通じて追求していく予定です。なお本ブログの記事は、あくまでわたくし個人の意見であり、所属先の方針や考えを代表するものではありません。

2016年度 沖縄県歴史教育者協議会総会(6月18日開催)

教材研究の場として私も参加させていただいている「沖縄県歴史教育者協議会総会」が明日開催されます。

 

在日米軍基地が沖縄に集中しているという「特殊性」と、世界中に800以上の米軍基地がある、という「普遍性」をどのように組み合わせて、教材化すべきか。前者を強調しすぎれば、他者理解がおそろかになるし、後者を強調しすぎれば、「基地があるところはみんな我慢している」という安易な受任論を喚起しかねない。

 

こどもたちの発達段階に合わせた「基地教育」(平和教育という文脈と社会科教育という文脈の双方の視点から)の可能性を議論したいと思います。

 

(以下、事務局からの案内文を掲載します)

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2016年度 沖縄県歴史教育者協議会総会のご案内

 

この度、沖縄県歴史教育者協議会では、歴教協全国大会を前に県総会を開催することになりました。この総会では8月にせまった沖縄大会にむけて、「安保を問う」授業実践をどのように構想するのか小学校、高校・大学の授業実践から考える場にします。

海兵隊による事件、綱紀粛正が叫ばれている中での飲酒運転による事故など、私たちは米軍基地、地位協定、安保、そして軍隊とは何かを再度子ども達と学ぶことが求められていると思います。そこで具体的に子ども達の疑問により添った授業実践を学びあいたいと実践報告を中心とした研究会を企画いたしました。

ぜひ多くのみなさんと語り合い、親睦を深める場にしたいと思います。今回の総会は、生活教育サークルの研究会と共催で開催いたします。多くの方のご参加お待ちしています。

 

≪県総会開催要項≫

 日時:2015年6月18日(土) 13:00~17:00

場所:琉球大学教育学部 教106教室

実践報告:「石嶺・沖縄から日本の政治について考えるー小学校における米軍基地学習」

                             (石嶺小学校 下地治人さん)

    :「海兵隊は沖縄で何をしているのかー高校・大学での平和教育実践」

                             (琉球大学非常勤講師 北上田源さん)

分散会:上記の2つの実践報告を受け、沖縄でどのように軍事基地・軍隊・安保について授業をすすめていけば良いか参加者と深めていきたいと思います。

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ビブリオバトル in 九州

f:id:daimayhawks:20160614214522j:plain私が所属する「九州西洋史学会」では、九州圏内を中心に西洋史を学ぶ学部生や院生の交流の場を設け、若手の育成を図ろうということで、2012年に「若手部会」を発足するにいたりました(わたくしも設立・運営に携わっていました)。

【詳細は⇒ 若手部会 をクリック!】

 

このたび、昨年年8月の夏合宿に続き、「ビブリオバトル 歴史のココがおもしろい!第2弾」を下記のとおり開催する運びとなりました。こういう取り組みを行っている、という宣伝もかねて、以下、事務局から送っていただいた案内文を転記します。うちの学生も数名参加する予定です。

 

なお、沖縄でも、他専攻、他大学とのゼミ間交流ができればといいなぁと思っているところです。

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ビブリオバトル 歴史のココがおもしろい!第2弾」

日時:2016年7月17日(日)14時ごろ〜
場所:九州大学文学部会議室
   〒812-8581 福岡市東区箱崎6丁目19番1号

懇親会:場所未定、18時ごろ〜(箱崎周辺)


ビブリオバトルは、プレゼンテーション能力を高めるだけでなく、バトラー(報告者)と聴衆ともに楽しめる企画です。なお、詳細や形式は下記のとおりとなります。

ビブリオバトルとは?
・  「本の紹介コミュニケーション」(知的書評合戦ビブリオバトル公式ウェブサイトより)http://www.bibliobattle.jp/
・  読んで面白いと感じた本を5分間でみんなに紹介してもらいます。
・  歴史学の専門書でなくても、歴史に関する本であるならOKです。
 
② 5分間で何を話すのか?
・  書名/作者/出版社/出版年
・  いつその本に出会ったか
・  その本を選んだ理由
・  その本の「キーワード」、「印象に残った一文」
 
③ 参加する上でのポイント
・  バトラーは学部生と大学院修士課程の方に限定します。
・  原稿を読み上げるのではなく、フリーハンドで本の内容を紹介してください。
・  制限時間(5分)は必ず守ってください。
・  他の人に本の魅力が伝わるような工夫をしてください。
 
④ 形式
・ バトラー4~6名のグループを結成します。
・ 各グループの報告とそれへの質疑応答が終了するごとに、バトラー全員で投票(自分には投票不可)します。
 
⑤ 表彰
・  優勝:バトラーによる投票数の総計により決定します(各グループ1名)
・  ギャラリー賞:ギャラリーの投票で全バトラーの中から1名を選びます(1名)
・  ベストクエスチョン賞:バトラー、ギャラリー含む質問者から運営委員が1名を選びます(1名)
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ゼミ・プロジェクトの段取り

宮古島のなかの世界史発掘プロジェクト」(宮古世界史プロジェクト)に関する予算は、残念ながら付きませんでしたが、手弁当でもよいので、まずは何かひとつ成果をつくりたいということで、プロジェクトそのものは、そのまま進めることにしました。

 

研究の進め方は、以下の4段階を想定しています。

1.文献調査(6~8月)

2.現地調査(9月)

3.分析・比較(10~12月)

4.公表(1~3月)

 

いまは、1の段階を進行中。ゼミの場所を図書館のオープンスペースにし、議論する、本を借りる、複写する・・・という作業を一緒にやっています。西洋史ゼミなのに、「沖縄県史」「上野村誌」などの自治体史をひもとくというのは、珍しいかもしれません。

 

学生自身が、「こういう記述がほしい/をみたい」と自ら見出して、館内を探しまわって、「ありました!」とその発見に興奮するという醍醐味を味わいつつあります。僕も、あらかじめ先(結論)が見えているわけではないので、いっしょに「なんでやろうね・・・?」という疑問を共有しながら、進めていければと思います。

 

2では、ドイツ文化村、宮古総合博物館などの訪問

3では、本テーマに似た他地域の事例と比較しながら、総合作業および中間報告

4では、共同論文として原稿化

を予定。

 

資金援助も含めて、がんばります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「宮古島のなかの世界史プロジェクト」始動!

先日のゼミから、新しいゼミメンバーを中心とした共同研究がスタートしました。テーマは、「宮古島のなかの世界史プロジェクト」として、旧上野村に設立されている「ドイツ文化村」をめぐる歴史を改めて掘り起こします。

 

1870年代に、宮古島民がドイツ難破船の船員を救助したことで、それにドイツ皇帝ヴィルヘルム1世が感謝の意をしめし、宮古島にそれを記念する石碑が建立されたとのこと。一時この歴史は忘却されていたものの、1930年代に、その石碑が再発見され、1936年には、ドイツと日本との交流を記念する行事が行われたという。そしてさらに下って1996年に、これらの歴史を顕彰するために「ドイツ文化村」が開設された、とのことです(ドイツ文化村のHPの説明を要約しました)。

 

19世紀末のドイツ商船の太平洋進出の状況はどうだったのか。1930年代の日独接近のなかで、「過去」がどのように「顕彰」(=美談化)されたのか。1990年代以降、宮古島の自治体・住民にとって「ドイツ文化村」とは何だったのか。様々な角度から分析できればと思っています。

 

まずは琉球大学の図書館にある関連文献を集め、読み込みを進めていきます。申請中の教育プロジェクト経費が採択されれば、それでメンバーで宮古島へGO!も可能です。しっかりと研究をまとめ、宮古島の教員・学芸員・市民の方々も含めた公開シンポも企画できればと考えています。

 

さて、わたくしも、せっかくなので、これを機にドイツ語の学習もせねば・・・。

 

 

 

 

 

最近参加した研究会情報

5月末から今日にかけて、以下のテーマの研究会および学会に参加しました。

・5月26日:ブーゲンヴィル島における第二次世界大戦の記憶(於琉球大学、国際沖縄研究所)

・5月28日~29日:軍事・社会空間の形成と変容[行政協定・沖縄・グアムについて](於明治大学歴史学研究会現代史部会)

・6月2日:プエルト・リコビエケス島における米軍基地問題および沖縄との比較(於琉球大学、国際沖縄研究所)

 

島嶼地域からの視点から、カリブ海・太平洋・世界の実相を見通すことの重要性がそれぞれ意識されていて、従来の「大国」の国家関係のみで描かれてきた歴史や政治学とは、一線を画しているのがわかります。

 

ただ、「西洋中心主義批判」がどんなに吹きあれようとも「西洋を学ぶこと」の意義自体は無くならないのと同じく、島嶼地域の様々な状況を強いる立場にある/あってきた「大国」の論理も同時にしっかりと追求していくこともまた改めて大切だと感じた次第です。だからこそ、沖縄で西洋史あるいはアメリカ史を学ぶことは、とても意味があることだと思ってます。

 

・・・それにしても、最近英語でのセミナーや研究会が増えてきているので、いいかげん英会話力をなんとかしなきゃと痛感。ツイッターでは文献情報以外に英語学習者のツイートをフォローし、いろいろと学んでいます。近々、近所の英会話教室にも通う予定です。これで担当している「史料講読」での自分の音読も少しはまともになればと思います(学生のほうが、発音が上手なことも多いから、それも勉強になります)。

新ゼミ生の卒論テーマ(大枠)の確定

本日のゼミで、新ゼミ生の卒論テーマの大枠がほぼ確定しました。

 

 概要は以下の通りです。

・1920~30年代におけるアメリカの航空機(産業)関係について

・1930年代前半のナチ政権の確立過程

・ハワイアン・ルネサンス/ハワイ文化復興運動/ハワイ主権獲得運動

 

まずは、これをやりたい!というプリミティブなモチベーションを持つことを重視し、最大限、学生の最初の着想に寄り添いながら、徐々に、具体的なテーマ設定へと進んでいく計画です。ある程度、先行研究があるものに誘導することはありますが。

 

ただ、アメリカ史に関する研究入門のなかに、ハワイ史がほぼ完ぺきに無視されている現状を改めて認識しました。いわんやしかるに、グアム、プエルトリコ、北マリアナ、米領サモアおや、です。「アメリカと島嶼社会」という項目を、アメリカ史のなかにきちんと入れ込むべきか、あるいは、アメリカとは異なる、文化・政治の主体として「独自路線」でいくべきか、これもまた色々と議論がもしかするとあるのかもしれません。

 

でも、やはり基礎は大事なので、基本となる国家に関する研究入門や概説書はしっかりとフォローしておくことは欠かせません。

 

 

 

はじめての共同研究報告

先日の西洋近現代史ゼミで、昨年秋から始動した現4年生(3名)からなる共同研究チームの研究発表会を行いました。

 

テーマは、「歴史のなかの新聞」。開始時に、私から提示したジェンダー、戦争、衣服、食、貧困などのキーワードのなかから、学生自身が「新聞」を選択。「新聞」を共通テーマにして、それぞれ卒論で扱おうとしている時代や地域にひきつけて関連論文を読んでもらい、論理を組み立ててもらうという方針で開始しました。全体の筋道を立てるために、佐藤卓己先生の『現代メディア史』の第1~4章もしっかりと読んでもらい、それも適宜、内容に組み込ませました。

 

結果的に、地域はドイツ・イギリス・フランス、時代は17世紀から19世紀末までと、あまりにも広い範囲を扱うことになってしまい、論点が拡散・希薄化してしまったことは否めないのですが、あくまで卒論のモチベーションを高めるために導入してみた実践であり、専門性よりも、きちんとひとつの「共同作品」をつくることそのものに重きを置いて進めてまいりました。

 

それでも、なんとかがんばって、ストーリーを組み立ててしっかり発表していました。聴衆の2、3年生も積極的に質問してくれて、報告25分・質疑40分の充実した発表会になりました。発表を終えた学生からも、もっと事前の打ち合わせをするべきだった、とか、「おわりに」をまとめるときに、次々と課題や論点が浮き上がってくる、とか、地域や時代をもっとしぼったほうがよかった、などの感想も出してくれて、それなりによい経験になったようです。

 

疑問に思ったことを、文献を通じて自ら調べる、という当たり前の営みを日常的に行ってもらうための壮大な「遠回り」を、専門性もさらに磨きながら、今後も継続していくつもりです。