We shall overcome ☆沖縄からのグローカルヒストリー☆

琉球大学西洋近現代史研究室を担当する池上大祐の教育・研究活動ブログです。アメリカと太平洋島嶼地域との関係について、(脱)・(新)・(核の)植民地主義の観点から研究しています。また、沖縄で西洋史やグローカルヒストリーを学ぶ意義・方法について歴史教育実践を通じて追求していく予定です。なお本ブログの記事は、あくまでわたくし個人の意見であり、所属先の方針や考えを代表するものではありません。

2019年度西洋史研究報告会のお知らせ

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来週の2月18日-19日に琉大西洋史研究室による研究報告会を開催します!地域文化科学プログラムへの配属希望の国創1年次で特に西洋史にご関心のある方はぜひいらしてください。出入り自由です。「歴史総合」講義最終日でチラシを配りそこねたのでこの場を借りて(まあ本ブログの存在を知らないでしょうけど…)。

もし高校生の方で、将来進学をお考えの方は、琉大にこういうイベントがあるってことを知っていただいて、今後の進路選択のご参考になればと思います。

 

ゼミ・オリエンテーションの季節

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3年次からゼミ配属を希望する現二年次へのゼミ・オリエンテーションを先程行ないました。全員見事に文化史系。音楽史、演劇史、美術史、宗教史に関わりそうなことへの関心が高いようです。

今後、どんな文献や具体的テーマを見つけてくれるのか、楽しみです!

文化史はあまり詳しくないので、その分こちらも予習を頑張らねば…。

異質だからこそ連帯する

昨日、高大連携歴史教育研究会第二部会研究会@日本大学に参加しました。第二部会で運営している「教材共有サイト」の利活用の現状と課題について議論するというのが趣旨。

高校の現場から、卓越した実践例とそれを支える教育学的知見が披露され、大いに勉強になりました。無意識に講義内で思いつきで工夫してきたことを、概念化してくれたことも多々あり、社会科教育学という分野の意義を大いに感じることができました。

ただ、そう感じれば感じるほど、私が専門としている歴史学という分野との「違い」があまりに大きいということも自覚させられました。私には教育学の観点からの分析やコメントは、物理学について求めらることと同様にもはや不可能である、ということも決定的に認識させられました。

したがって「歴史教育」という概念も正直分からなくなってきました。「大学教育」(高等教育)とは何が、という教育学的研究テーマはありそうな気もしますが、その存在を全く意識せずに、あくまで「歴史学の方法論を身につけて卒論を書くという知的営み」を学生に実践してもらうための措置全般が、私にとっての「歴史教育」です。史料を読む前と読んだ後で学生の学びがどう変化したのか、というのは本来的には「どうでもよい」ことで、その史料の解釈の妥当性や論理への組み込み方の「結果」についてあーだこーだ議論していく、というのが研究室での実践です。ただ、教員養成課程に関わっている以上、最低限の中等教育機関の現場で求められるスキルや知識を身につけてもらうことも考えてきたつもりですが、所詮は付け焼き刃なのはいうまでもありません。

では、昨日の議論を私がどう活かすか。高校の先生の真似事をしても太刀打ちできないという事実を受け止め、自分に何ができるかを再考せねばなりません。講義資料をそのまま共有サイトにアップするというよりもむしろ、講義資料を作成する中で使用した地図、史料、写真などを取り上げてその「選定理由」を解説したものを共有してもらう、ということを思い付きました。自分が講義で説明する事柄を支える「地図」等の資料選定は、けっこう時間をかけています。そうした小さな実践が、現場での教材作成に寄与できるかもしれません。そうした要望も昨日の質疑でも多く寄せられていましたし。

試しにいくつか作ってみたいと思います。

 

 ⭐️

SNSでは、在外研究に備えて英語で頑張りますが、もっと言いたいことがある場合にはブログで日本語で書いていくようにします。本当は全て英語…といきたいところですが、母国語力も重要だ、という言い訳を…。

 

2020年の研究活動についての抱負

2020年になりました。秋には米大統領選が控えるなか、イラン革命防衛軍の司令官をアメリカが殺害するというニュースが飛び込み、幸先悪いスタートになったようです。年末に「情報収集」の名の下で中東海域への自衛隊派遣を決めたばかりの安倍は、今回の件についてノーコメントという相変わらずの無策ぶりを発揮。「無責任体制」は絶望的にも今年も続くようです。必ず叩き潰さねばなりません。

 

今年は、私にとっては英会話力が試される一年になりそうです。4月末には、A・G・ホプキンズ先生の来沖の窓口役を担当する予定。6月にはカナダのニューファウンドランド島での国際島嶼学会で報告する予定。8月後半から翌1月半ばまで在外研究でワシントンD.C.滞在(またグアムと迷い始めたが…)を計画中。継続している週一回の英会話レッスンをもっと効果的にするために、自主レッスンもきちんとやろうと思います。

 

今年は、徹底してグアム研究(米軍基地拡張の歴史、第二次大戦の記憶研究)に没頭し、その範囲内で、島嶼とは何か、アメリカ帝国とは何か、基地のある社会が抱える共通の課題とその解決方法をどう見出すのか、歴史教育の現場でどう共有化ができるのか、といったことを考えていく一年にします。次の単著を出すための土台をしっかり作っていきたいです。

 

また1月末には、年末に同僚からお声かけいただいた縁で、沖縄戦若手研究会の勉強会に出席する機会もいただきました。地域(生活拠点)の歴史を考える場にも参与できることを嬉しく思うと同時に、しっかり勉強しなければ、と決意新たにする次第です。

 

今年もよろしくお願いいたします。

 

2019年度西洋史研究室忘年会@まるしぇ

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今日は年内最後のゼミのあとに、西洋史研究室(中世史・近現代史合同)の忘年会を開きました。最前線で卒論準備と共同研究を頑張っている3年生や留学生、卒論の追い込みを頑張っている4年生、学部生を温かくサポートしてくれている院生のほか、OBたちも駆けつけて来てくれました。お心遣いもいただいて恐縮です!m(_ _)m

良いことも、苦難もありつつ、それぞれの道を歩んでいる姿を見て僕も頑張らなきゃ、と決意新たにしました。現役生およびOBの今後の頑張りと活躍を心から期待します!

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ただ、琉大着任間もない初期の頃を支えてくれたOBとは残念ながら連絡が取れないのですが、いつかどこかでつながることができれば、と思います。

            🌟

で、明日は琉球大学島嶼地域科学研究所主催のワークショップ(9:30-16:00)に参加します。オーラルヒストリーのノウハウについて、使用言語ほぼ英語で学びます。大丈夫かいな…。心の準備ということで、今からこれで予習。でも寝てしまうかも…zzz。

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…あ、一応今日締め切りの某原稿は8割できてます。

明日ワークショップ終了後に追い込みます💦

両輪としての「学術研究」と「実践研究」

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昨日は沖縄県歴教協定例会に参加し、私も実践報告しました。共通教育科目「平和論」での私の担当分(2コマ分)の講義テーマが「核兵器の歴史」。講義内容を①原爆開発、②原爆投下目標決定、③原爆神話、④核実験、⑤スミソニアン原爆展示論争、⑥沖縄と核で構成し、ミニレポートで「講義内容を踏まえて、沖縄県内における核(兵器)の歴史についての展示案を構想してください」という課題を出しました。この方法のほうが、講義内容を要約せよという課題よりも、学生の核に対する認識や思考のプロセスが読み取れると思ったからです。

今回はそのレポート分析をやってみました(詳細は、高大連携研教材共有サイトにまたアップしようと思います)。ひとことで言えば、エンタメ重視の展示方法に依拠するほどコンテンツ(内容)が薄くなる、という傾向です。また、博物館=観光地と認識しているのもあり、博物館との接点がそもそもない学生も多いのかなぁとも感じました。

こうした、特定のテーマを課すことで思考力を図る方法を教育業界用語で「追い込み方」(精神的に追い込むとかもちろんそういう意味ではなくて)というらしく、自分がやっている実践をどう言えばいいか、言葉が見つからなかった身としては、ストンと腑に落ちた表現でした。よりよい工夫を考えてみたいです。

他、知花昌一さんのライフヒストリーについての教材を東アジア共通教材(韓国と台湾の大学で授業実践)として位置付けようとする挑戦的な実践研究や、難民をめぐる日本政府の対応にフォーカスした地理実践も拝聴できて勉強になりました。

    ⭐️

史料にもとづいて事実探求を追い求める「学術研究」と、最新の学術研究の成果なども踏まえ教育現場で教材開発し、学びの効果を探求する「実践研究」の両方を担っていると言えなくもないですが、学問的訓練を受けてきたのは前者で、所属先でも一義的には前者がメインのやるべき仕事になります。

それでも、「歴史教育は歴史研究の下請けなのか」というよく見かける問いには、最近では「歴史実践」という言葉で包摂し、その対等性を強調する見方があるように、別にどちらが上かというのではなく、いわば両輪として(同僚の日本史の先生もいつもおっしゃる)、同じ歴史実践者として、今後も学び合えたら、と思っています。

(ただ、「教育学」はやっぱり専門外なので、どう考えるべきかよくわからないのも確かです。)

 

第16回九州西洋史学会若手部会「研究報告会」の開催

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紅葉彩る、秋真っ只中の福岡大学。昨日24日(日)は、九州西洋史学会若手部会「研究報告会」でした。

九州大学福岡大学熊本大学琉球大学から6名の報告者を含む20名強の学生や教員で活発な討論がなされました。別府大学甲南大学からも参加してくださり、質問もたくさんしていただいて大いに盛り上がりました。私のゼミ生たちも、色々意見をいただき刺激を受けたようです。

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九州・沖縄ならではの視点で、既存の西洋史の枠組みを切り崩すという野心も大事にしつつ、まずは楽しく議論するという「場」の提供をこれからも継続できたら、と思います!

 

関係者の皆様、お疲れ様でした。