We shall overcome ☆沖縄からのグローカルヒストリー☆

琉球大学西洋近現代史研究室を担当する池上大祐の教育・研究活動ブログです。アメリカと太平洋島嶼地域との関係について、(脱)・(新)・(核の)植民地主義の観点から研究しています。また、沖縄で西洋史やグローカルヒストリーを学ぶ意義・方法について歴史教育実践を通じて追求していく予定です。なお本ブログの記事は、あくまでわたくし個人の意見であり、所属先の方針や考えを代表するものではありません。

年内の授業終了~西洋史研究室忘年会

後期の年内の授業が昨日で無事終了。

西洋史概説Ⅱでは「長い16世紀」「長い18世紀」「長い19世紀」を終え、年明けから「短い20世紀」に入ります。

西洋史研究Ⅲでは、木畑洋一著『20世紀の歴史』第4章1節まで読み進めました。年明けは脱植民地化と冷戦の関係について考えます。

西洋史史料講読では、Vincent J. Intondi, African Americans Against the Bomb: Nuclear weapons, Colonialism, and the Black Freedom Movement, California: Stanford University Press, 2015をテキストとし、Chapter 1 "The Response to the Atomic Bombings of Hiroshima and Nagasaki", pp.9-28のほぼ半分を翻訳しました。原爆投下・核実験の歴史と黒人史とのつながりがとても興味深いです。

卒業論文研究Ⅱでは、3年次ゼミ生がそれぞれの研究テーマを一歩深めることができ、洋書の選定作業が本格化してきました。近代スコットランド史を研究する学生は、先日の九州西洋史学会若手部会(熊本大学開催)にて報告し、他大学のみなさんのレベルの高さに、大いに刺激をうけたそうです。

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報告の様子です。たくさん貴重な質問や助言をいただきました。

 

◆ゼミ共同研究では「石垣島のなかの世界史」発掘を進め、ロバートバウン号班とマラリア班にわけて構成することにしました。年明けからは「なぜ石垣島・沖縄のなかの世界史」を発掘する必要があるのか、それから何が見えるのか、について議論します。3月1日には那覇佐賀大学との合同ゼミを開催し、そこで報告させていただく予定です。

 

というわけで、昨日は西洋史研究室忘年会でした。卒論執筆中の4年次生やフィリピン語学留学から帰ってきたゼミ生も合流してくれました。ちょうどゼミ生の誕生日でもあったので、ささやかなお祝いもおこないつつ。年明けからも、頑張りましょう!

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お店の音楽が「アニソン特集」でした。リクエストもできるということで、斉藤由貴の「悲しみよこんにちわ」を流していただきました。感無量でした。

 

 

 

 

「歴史系用語精選に関するアンケート調査」の開始

www.kodairen.u-ryukyu.ac.jp

 

私も運営委員として携わっている「高大連携歴史教育研究会」など3つの団体を主体として、「歴史系用語精選に関するアンケート調査」を行うことになりました。上記のHPをご覧いただき、ぜひともアンケ―トにご協力いただければ幸いです。忌憚なき意見をなにとぞよろしくお願いいたします。

なお、今回高大連携研は「用語精選第一次案」を作成しました。現在、世界史・日本史それぞれで教科書の暗記すべきとされる用語が3500~3800語にまで膨らんでいる状況を見直し、2000語前後にまで「精選」したものです。これはあくまで暗記すべき本文の用語を対象としたもので、欄外の図表や説明注による記述を排除するものではありませんし、現場の創意工夫で、歴史的思考力を養う教材の一環として、細かい固有名詞を使うことを否定するものでもありません。

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地域性や教師の個性が発揮される、新しい歴史教育をなんとか模索するなかで、個人的には、教科書の「聖典化」からそろそろ卒業すべきでは、と思っています。やれ、「あの用語がない!」「あの用語がある!」といった「戦い」に終始し(それはそれで大事だが・・・)、よくよく考えたら実際に教育を受ける生徒たちの「主体的な学び」というものを本当に考えてきたのか?と疑いたくなる状況はせめて克服すべきかと。

そのためには、「より確からしい過去の事実を見出すことのできる方法」をきちんと生徒・学生と共有できるような仕組みも必要なのでは、と最近思うようになりました。そこで、今年担当した大学1年生向けのアカデミックスキルに関する授業で、以下の問いを出しました。

(例)あなたが、「第二次世界大戦末期のアメリカ軍は、世界のどこに軍事基地を確保しようと計画したのか」をテーマに研究すると仮定した場合、以下の史資料や文献を、より確からしい事実が読み取れる順(=史料的な信頼性が高い順)に並べ替えてみましょう。

1、現代のアメリカの大学教員が書いた研究書(英語で出版。註あり)

2、当時、軍事基地候補地を話し合うための会議に参加した米軍高官の日記(英語で出版)

3、現代の日本のノンフィクション作家が書いたルポルタージュ(日本語で出版。註なし)

4、当時のアメリカ軍が作成した機密文書(アメリカ国立文書館に保存)

5、当時のアメリカ軍の責任者が退役した後に書いた回想録(日本語訳で出版)

ほぼ全員の学生はきちんと並べ替えができていました。こういう「あたりまえな」ことも、コツコツと積み重ねていくことで、たとえば、ネット空間の言説の「信頼性」の有無について、きちんと一歩立ち止まって考えてくれるのではないかと思っています。

 

・・・かつて塾講師時代に私も手を染めてしまった「年号語呂合わせ」などに頼ることなく、「年号は年表を見れば済む。考えるのはそこからだ。」という展開にもっていけるような新しい方法(教育や入試の在り方も含めて)をなんとか見出したいと思います。

卒論中間発表会

今日は西洋近現代史ゼミ4年次生の卒論中間発表会を行いました。

今日の報告者のテーマは、以下の通り。

・19世紀ロンドンの下層社会ーディケンズ、メイヒューの視点からー

戦間期アメリカの航空文化

・1960年代以降のハワイアン・ルネサンス

ゴルバチョフペレストロイカ

日本語の主要な研究書・論文は3年次の間にフォローし、柱となる洋書を3年次終了までに入手して、今、鋭意読解中という状況です。

卒論タイトルについては、これまでは基礎が大事ということで「〇〇年代◆◆における△△に関する一考察」というテンプレートに当てはめさせていましたが、これからは卒論の内容にマッチする「かっこいい」表題をつけてもらおうと思っています。学生たちも、表題にこだわりたい!と言ってて、テーマに対する愛着を感じることができて頼もしく思えました。

最終の正式な締め切りは1月半ば。それまでに草稿チェックや個別指導を行いながら、完成を目指していくことになります。4年間(+α)の集大成です。ぜひとも頑張ってほしいと思います!

 

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気づけば、もう11月…。私も2月末までに3つの原稿を書かねばなりません。上原専禄論、安全保障と基地(政治学テキスト)、島嶼地域論(学内共同研究)。これに加えて自分の科研(2つ)の成果も出さないといけません。…私も頑張ろう。

 

『地域から考える世界史』(勉誠出版、2017年)近刊!

blog.livedoor.jp

 

10月末~11月初旬に『地域から考える世界史』(桃木至朗監修、藤村泰夫・岩下哲典編)がいよいよ刊行されます。

 

本書は、2007年からスタートした「地域から考える世界史」プロジェクト(代表・藤村泰夫先生)に結集する全国の歴史研究者・歴史教育者による、これまでの歴史実践の集大成です。私自身は本書には寄稿しておりませんが、編集担当のひとりとして末席に加えていただいております。

 

これから教員をめざす学生たちに、ぜひとも手に取っていただきたい作品です。自分たちが習ってきた方法を現場で再生産するだけでは、何も生まれません(これは大学教員も同じだと痛感しています)。本書をつうじて新しい方法や学説を摂取しつつ、「何を題材とすべきか」、「問いをどう設定するのか」ということを、常に考え続けることができるような教員になってほしい、というのが私の願いです。

 

学部改組に伴って、来年度から開講する講義科目「歴史総合」の内容を現在プランニング中ですが、本書も土台の一つにしたいと思っています。

 

  ☆

 

う~ん、クライマックスシリーズ第2ステージ、ホークス負けた。ただ、終盤に反撃もしているし、中継ぎもぴしゃっと抑えているので、きっと明日に活きると思います!

 

 

地理歴史人類学専攻課程⇒地域文化科学プログラム

www.grs.u-ryukyu.ac.jp

平成30年4月より、学部改組にともなう新学部がスタートします。

文科省から正式に認可をうけ、着々と準備が進められています。

 

現行 法文学部人間科学科地理歴史人類学専攻

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  国際地域創造学部国際地域創造学科地域文化科学プログラム

 

と、なります。

これまで培ってきた専門性に裏打ちされたカリキュラム体系を維持しつつ、他プログラム(経済、観光、経営、国際言語)の知見も摂取することで汎用性も育成していくことを主眼としています。本プログラムでは、これまでどおり、中学社会・高校地歴の教員免許、学芸員資格、GIS学術士の取得が可能です。

 

年次進行は大まかに以下のような流れとなります。

<1年次~2年次前期>幅広く複数分野の学問的基礎力を習得する。

※最初はプログラムに配属されないので進路選択や学修について不安なこともあるかもしれませんが、いわゆる「クラス担任制」(本学では「年次指導教員」という呼び方になっています)が整っており、いつでも相談できる仕組みになっております。何を学びたいのか、問題意識を鍛えておく大切な期間です。

 

<2年次後期~>所属するプログラムへの配属

※原則的には学生の希望に応じた配属になりますが、各プログラムの目安となる配属人数の上限を超える場合には、1年次~2年次前期までの成績によるセレクションが行われる予定です。

 

<3年次前期~>所属するプログラム内の各ゼミへの配属

歴史学、地理学、考古学、人類学、民俗学の各ゼミに所属し、卒業論文作成の準備がスタートします。いよいよ、本格的な専門的研究活動のスタートです。卒論執筆は、大変ですが、やりがいのある大きな作業です。学生のみなさんにとっては人生で最初の自分の「作品」となります。ぜひ、一緒にがんばりましょう!

どんな教員がいるのかは、以下を参照してください。

学科紹介 : 人間科学科 : 地理歴史人類学専攻課程 – 琉球大学 法文学部

 

高校生の方、読んでくれるかな・・・。

 

石垣島研修 with Typhoon ( 2017年9月12~14日)

先日、西洋史近現代史ゼミを中心として石垣島に行ってきました。

目的は、ロバート・バウン号事件(1852年)と八重山戦争マラリアのついての調査および史跡訪問です。

 

下の写真は、名蔵湾南側の岬にある「唐人墓」。ロバート・バウン号に乗っていた苦力(中国人労働者)たちが船内で反乱を起こして、石垣島に上陸したのち、この地で亡くなった128名を弔っている場所。1970年に石垣市と台湾の連携で、建立されたとのこと。

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その唐人墓の傍らには、太平洋戦争中に日本軍が殺害した米軍捕虜の慰霊碑もあります。

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次に訪れたのは、バンナ公園内にある「八重山戦争マラリア犠牲者慰霊之碑」。この周辺には様々な戦友会の慰霊碑がありました。行ってみないとわからないものです。唐人墓も含めて、こうした記念碑建立=記憶化のプロセス自体も、分析対象になりそうです。

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他にも、石垣市八重山博物館、八重山平和祈念館を訪問しました。ちなみに、以下の写真は、石垣島ゆるキャラ「ぱいーぐる」。南(ぱい)と八重山の天然記念物のカンムリワシがモチーフのようです。

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初日の最後は、ホテル近くの「石垣島ヴィレッジ」の中の石垣島鶏のお店へ。観光地とあって少し割高でしたが、一本一本の焼き鳥はとてもおいしかったです。

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しかし、二日目の13日は台風の影響で一日中ホテル待機。他の多くのお客さんが雑談しているなか、ホテルのロビーでゼミを行いました(写真を撮り忘れた)。この日はみんなで買っておいたカップ麺や缶詰、そしてホテルからの無料配布されたカレーでしのぎました。

 

そして最終日には、ロバート・バウン号が沈没した崎枝湾、石垣―台湾をむすぶ電信所の跡地、ミンサー工芸品店を訪問しました。特に電信(海底ケーブル)の歴史は「地域」からグローバル・ヒストリーを描いていくための興味深い素材となりそうです。米軍による銃撃の跡も戦争の歴史を感じさせます。

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最後に、せめてビーチには降り立ってみようということで、一枚。波は荒かったです。

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・・・という、台風に遭いながらも、充実した研修調査旅行でした。

ここでの経験を、今後のゼミ活動に活かしてほしいと願っています。

西洋史ゼミ・前期打ち上げ!

昨日は、ゼミの前期打ち上げ会でした!

安里界隈の中華居酒屋を学生が見つけてくれて、リーズナブルでかつおいしゅうこざいました(写真撮り忘れた・・・)。ただ、学生も琉大近辺、那覇界隈、中部、南部と居住地域がばらばらで、夜10時ごろには公共交通機関もほぼ使えない状況で、どこを会場にすべきかいつも迷います。今後は、車での移動も考えて、飲むことよりも旨いもんを食べにいく路線での企画もアリかなぁと思った次第です。

 

来月は、9月12日~14日は「石垣島のなかの世界史」発掘プロジェクトによる現地フィールドワークを予定しています。夏期休業中とはいえ、卒論や共同研究に向けた夏期課題もありますが、基本はときに羽を伸ばしてしっかりと充電してもらいたいと思います。

 

私は、残念ながら今夏は渡米する余裕がないので、粛々と自分の仕事をこなす日々になりそうです。