We shall overcome ☆沖縄からのグローカルヒストリー☆

琉球大学西洋近現代史研究室を担当する池上大祐の教育・研究活動ブログです。アメリカと太平洋島嶼地域との関係について、(脱)・(新)・(核の)植民地主義の観点から研究しています。また、沖縄で西洋史やグローカルヒストリーを学ぶ意義・方法について歴史教育実践を通じて追求していく予定です。なお本ブログの記事は、あくまでわたくし個人の意見であり、所属先の方針や考えを代表するものではありません。

済州島滞在記

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5月11日に済州大学での研究報告を無事終えて、昨日12日は、済州大学の先生ご夫妻のご好意で、済州島西部の旧日本軍関連戦跡にご案内していただきました。本当にありがたかったです。

西南部区域には1930年代から日本軍飛行場(「アルトゥル飛行場)が建設され、日中戦争時の南京への渡洋爆撃拠点のひとつとして利用されたという歴史がある場所です。

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周辺には多くの掩体壕が残存しており、そのうちのひとつには、ゼロ戦を模した芸術作品も展示されて、「過去に学ぶ」という共通した内容のメッセージ入りタグが括られていました。この付近には日本軍通信施設も残っていました。

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また、このあたりでは「四・三事件」による住民虐殺も行われた場所でその鎮魂碑も建立されていました。重い歴史が埋め込まれています。

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次に訪問したのは、海岸線に8箇所ほどあるという「陣地洞窟」です。大戦末期に日本軍が武器等の物資を貯蔵するために緊急に作ったもので完成を見ずに敗戦となったとのことです。

以下の写真は南西端の陣地洞窟。ドラマ「チャングム」のロケ地にもなった場所です。残念ながら、最近になって洞窟は立ち入り禁止になったようで中までは見れませんでした。

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以下3枚の写真は少し北上した西端部付近の陣地洞窟に向けて無線で命令を発信する司令部跡です。

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この辺りはイカで有名な漁港が近くにあり、遊歩道も整備されたトレッキングコースとしても観光客に人気の場所のようですが、ここにもひっそりと、戦争の傷跡が残っていました。

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軍事基地あるいは戦争を小さな島から考察するという視点は、おとといの学術研究会「東アジアにおける島、軍事基地、コモンズ」でも共有されていたテーマで、この済州島滞在中に私は、多くのことを学べました。一見、本研究会は、私の専門分野のアメリカ史研究とは無関係に思えるかもしれませんが、「島/地方/緩衝地域に生きる」という現実や問題意識に裏打ちされた、ほかの皆さんの研究活動に私は心から共感しました。太平洋島嶼現代史家という自己認識をはやく打ち立てて、私にとっての沖縄での現代史研究をもっと洗練させていきたいと思います。

 

 

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済州島での食事、どれも美味しゅうございました!

以下は、済州大学学食ランチと、昨日の夕飯時にドキドキしながら行った地元の麺料理屋の麺(料理名は忘れました…)。

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今から帰国です。ルートは済州島→釜山→福岡→沖縄。乗り継ぎ時間がいびつで、沖縄到着は午後10時過ぎ。着いたら、明日の講義準備です…。