We shall overcome ☆沖縄からのグローカルヒストリー☆

琉球大学西洋近現代史研究室を担当する池上大祐の教育・研究活動ブログです。アメリカと太平洋島嶼地域との関係について、(脱)・(新)・(核の)植民地主義の観点から研究しています。また、沖縄で西洋史やグローカルヒストリーを学ぶ意義・方法について歴史教育実践を通じて追求していく予定です。なお本ブログの記事は、あくまでわたくし個人の意見であり、所属先の方針や考えを代表するものではありません。

「歴史系用語精選に関するアンケート調査」の開始

www.kodairen.u-ryukyu.ac.jp

 

私も運営委員として携わっている「高大連携歴史教育研究会」など3つの団体を主体として、「歴史系用語精選に関するアンケート調査」を行うことになりました。上記のHPをご覧いただき、ぜひともアンケ―トにご協力いただければ幸いです。忌憚なき意見をなにとぞよろしくお願いいたします。

なお、今回高大連携研は「用語精選第一次案」を作成しました。現在、世界史・日本史それぞれで教科書の暗記すべきとされる用語が3500~3800語にまで膨らんでいる状況を見直し、2000語前後にまで「精選」したものです。これはあくまで暗記すべき本文の用語を対象としたもので、欄外の図表や説明注による記述を排除するものではありませんし、現場の創意工夫で、歴史的思考力を養う教材の一環として、細かい固有名詞を使うことを否定するものでもありません。

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地域性や教師の個性が発揮される、新しい歴史教育をなんとか模索するなかで、個人的には、教科書の「聖典化」からそろそろ卒業すべきでは、と思っています。やれ、「あの用語がない!」「あの用語がある!」といった「戦い」に終始し(それはそれで大事だが・・・)、よくよく考えたら実際に教育を受ける生徒たちの「主体的な学び」というものを本当に考えてきたのか?と疑いたくなる状況はせめて克服すべきかと。

そのためには、「より確からしい過去の事実を見出すことのできる方法」をきちんと生徒・学生と共有できるような仕組みも必要なのでは、と最近思うようになりました。そこで、今年担当した大学1年生向けのアカデミックスキルに関する授業で、以下の問いを出しました。

(例)あなたが、「第二次世界大戦末期のアメリカ軍は、世界のどこに軍事基地を確保しようと計画したのか」をテーマに研究すると仮定した場合、以下の史資料や文献を、より確からしい事実が読み取れる順(=史料的な信頼性が高い順)に並べ替えてみましょう。

1、現代のアメリカの大学教員が書いた研究書(英語で出版。註あり)

2、当時、軍事基地候補地を話し合うための会議に参加した米軍高官の日記(英語で出版)

3、現代の日本のノンフィクション作家が書いたルポルタージュ(日本語で出版。註なし)

4、当時のアメリカ軍が作成した機密文書(アメリカ国立文書館に保存)

5、当時のアメリカ軍の責任者が退役した後に書いた回想録(日本語訳で出版)

ほぼ全員の学生はきちんと並べ替えができていました。こういう「あたりまえな」ことも、コツコツと積み重ねていくことで、たとえば、ネット空間の言説の「信頼性」の有無について、きちんと一歩立ち止まって考えてくれるのではないかと思っています。

 

・・・かつて塾講師時代に私も手を染めてしまった「年号語呂合わせ」などに頼ることなく、「年号は年表を見れば済む。考えるのはそこからだ。」という展開にもっていけるような新しい方法(教育や入試の在り方も含めて)をなんとか見出したいと思います。