We shall overcome ☆沖縄からのグローカルヒストリー☆

琉球大学西洋近現代史研究室を担当する池上大祐の教育・研究活動ブログです。アメリカと太平洋島嶼地域との関係について、(脱)・(新)・(核の)植民地主義の観点から研究しています。また、沖縄で西洋史やグローカルヒストリーを学ぶ意義・方法について歴史教育実践を通じて追求していく予定です。なお本ブログの記事は、あくまでわたくし個人の意見であり、所属先の方針や考えを代表するものではありません。

グアム大学への行き方(ローカルバスを使う)

現在、グアムに出張中です。グアム大学ミクロネシア地域研究センターでの史料調査、史跡巡検、研究者との交流をコツコツと進めています。明日は、戦跡ガイドツアーに参加する予定です。

 

さて、今回はグアム大学への行き方についてご紹介します。タクシーやレンタカーを使わずに行くためには、地元ローカルバス(Guam Regional Transportation Authorities) を乗り継ぐ必要がありますが、その情報は、日本語の旅行ガイドには一切出て来ません。おそらく、観光客の利用を避けるためなのかもしれません(観光用バスより安いので)。実際、乗客は地元の方々のみで、私のように観光客っぽいアジア人が乗るのは、私自身ほかに見たことがありません。したがって、この記事は決して観光客の利用を促進する目的ではなく、学術的な目的でグアム大学に行く必要がある方に向けたものであることをご理解ください。

 

まずは、「JPスーパーストア」というお土産屋の前から、午前7時56分の”Blue Line Express”の便に乗ります。ちなみに、ここにはバス停の印は一切ありません。

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ここから、約30分かけて、ハガニアのバス乗り継ぎ地点に向かいます。それがここです。奥には、ハガニアショッピングモールがあります。

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ちなみにバスはこんな感じです(新しい車体)。

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ここで1時間、のんびり待って、9時30分発のグアム大学を経由する“Red Line”に乗ります。あちこちと立ち寄るので、グアム大学に到着するのは、約一時間後の10時30分ごろです。合計、二時間半かかります…。 

 

帰りは、グアム大学構内のフィールドハウス前がバス停になっているので、午後3時56分の便に乗りました(この後には、あと二本くらい便がありました)。

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そして30分後の午後4時半ごろに、ハガニア乗り継ぎ地点へと戻ることできます。なお、ローカルバスは巡回ルートになっているので、上り、下りの概念はありません。

 

ハガニア到着後は、ハガニアショッピングセンターに移動して、観光用バス「赤いシャトル」を駆使して、ホテルに戻ることになります。まずは、「ショッピングモールシャトル」に乗って、ハガニアショッピングセンター→GPO(グアムプレミアアウトレット)へ。ここから、「タモンシャトル北廻り」に乗りかえて、タモンホテル地区を北上して、JPスーパーストア前で降りる、という流れです。もちろん、ハガニアで1時間待てば、朝に乗った“Blue Line Express”に乗っても戻れるのですが、極力観光用バスを使うようにしています。安いからといって、地元の生活手段に土足で入り込むことはやはり控えるべきではないのか、というのが今の私の考え方です。

 

ちなみに、ローカルバスは、どこで降りても一律1ドル50セント(昨年より50セント値上がりしてました)。観光用バスは4ドル(1日乗車券は12ドル)。

 

まあ、左ハンドルを苦にしない方は正直、レンタカーをお勧めしますけどね。わたしにはまだその勇気がなくて…。

 

 

 

2018年度 西洋史研究報告会、無事終了!

ここ三日間、こんな行事をやってました。

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4年次は卒論発表、3年次は卒論中間報告、2年次は関心あるテーマの紹介、という内容。特に4年次は報告1時間、質疑1時間とってみっちり議論!疲労しつつも、色々な議論ができたと思います。

加えて、ゼミで進めている共同研究の中間報告も行いました。「久松五勇士」がどう顕彰されてきたか、またどう批判されてきたかのかを整理し、電信網整備という要素とも絡めながら地域と世界史をつなぐというもので、よくまとまっていました。大変だったと思いますが、半年間の成果が見え始めました。

今年は人数の多い2年次にも現時点で関心あるテーマ(ベトナム反戦運動、北米アイルランド移民、アメリカ教育史、ヒップホップの歴史、レズビアンの歴史、ユダヤ人と教育)を紹介してもらいました。これから膨大な文献や資料の「海」に入り込むことになりますので、彼らなりの「舟」を編んでもらって、溺れることなく泳ぎ切ってほしいと思います。

合宿形式でやれればなぁと思いつつも、集中講義や各種講座と重なることもあるようで、柔軟に出入りができるように大学での開催としました。これが一番いいのかな。

そして最後に打ち上げ。色々あるようで全員は揃いませんでしたが、有志で飲みました。お疲れ様でした!

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後期のゼミが終了!

新年最初の記事になります。

あっという間に過ぎ去って行こうとする1月。先日卒業論文の提出日を迎え、力作が集まりました。2月20日〜22日には、毎日朝から夕方まで西洋史研究報告会を開催します。4年次は報告1時間、質疑1時間のデスマッチ?です!「過ぎ去ろうとしない」卒論と今しばらく向き合ってもらえればと思います。

 

そして今日はゼミの最終回で、久松五勇士に関する共同研究の進捗状況について議論しました。資料や文献はかなり収集できていて、全体構成の骨組みはできてきました。あとは「肉付け」および「肉の削ぎ落とし」ですね。予定の3月10日の琉球沖縄歴史学会例会企画「若手報告会」にエントリーさせてもらう予定です。この成果は今後きちんと活字化していきます。

 

来週には来年ゼミに入る予定の2年次へのゼミオリエンテーションを行い、春季休業中にやっておくべき作業(文献リスト作り)を説明します。

 

西洋史/世界史を沖縄で考える意味を追い求めて、西洋史近現代史ゼミは走り続けます!

 

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(おまけー自宅のフロアマット)

 

 

 

2018年のゼミ活動を締めくくる

昨日で年内の講義やゼミが無事終わりました。

今年は、未発行[編集中]のものも含めて、以下の文章を書きました。

・論文2本: 上原専禄論、南太平洋非核地帯構想

・教科書(概説書): 日米安保について(一章分を担当)

・書評: 『核密約から沖縄問題へ』、『沖縄平和論のアジェンダ

・文献紹介: 『公文書問題の「闇」』

・授業実践: 沖縄のなかの世界史発掘プロジェクトについて、核兵器の現代史講義内容の紹介

・コラム: 歴評の「文化の窓」欄での、沖縄での歴史実践の紹介

 

二万字を超える「長距離走」が疎かになったので、来年は、中短距離走はちょっと控えたいなぁと思いつつ・・・(でも断れないんですよね)。

     ☆

4年次ゼミ生も、卒論の追い込み中(提出は来月半ば)。年末年始は卒論草稿のチェック期間。手元にある素材をきちんと活かすこと=カレーが無理なら肉じゃがにしよう、という発想で、乗り切って欲しいですね。ちなみに一人は、最北端の国立大学大学院に合格しました!

3年次も、個性豊かな着想で、卒論準備が進んでいます。2年次も加わっての、久松五勇士を素材とした共同研究も、「日露戦争史観」の歴史/系譜、海底ケーブル敷設、ウミンチュとしての「男らしさ」表彰など、掘り下げてみると面白そうです。

 

で、忘年会@ビストロ食堂へ。忙しい合間を縫って4年次、ゼミOG、中世史ゼミの学生も来てくれて、楽しく歓談できました!食事も美味しくボリュームもあってお気に入りのお店の一つです。

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まだ校務関係の仕事自体は残っているのですが、ま、ひと区切りですね!

 

さて今日から東京出張。歴史教育についての研究会に参加します。寒いかな。

後期新科目「歴史総合」始まる

後期から新設科目「歴史総合」が始まりました。新学部である国際地域創造学部1年次が主な対象で、2年次以上の旧カリキュラム適用学生(彼らは法文学部)の「西洋史概論Ⅱ」との併設で開講しています。

4年後の新学習指導要領を見越しての科目設置で、日本史、東洋史西洋史琉球/沖縄史をうまく接続できるような内容構成を意識してなんとか進めています。

とはいえ、全領域・全地域を網羅することは15回の講義では難しいので、私の研究対象でもある「太平洋」という場に注目し、大きく3つに時期区分して構成してます。

1、太平洋の「発見」-16〜18世紀

2、太平洋の「分割」-19世紀〜20世紀初頭

3、太平洋の「破壊」-20世紀中頃〜

もともと長年、共通教育「西洋の歴史と文化」で行ってきた授業内容で、「西洋史っぽくない」という感想ももらっていたこともあって、ごっそり歴史総合のほうの内容にしてみた、ということです。

今は上記の1の時期について扱っているところで、昨日は「海賊の世紀ー17世紀」というテーマで話ました。私掠船によるスペイン銀船隊への襲撃という動向を、オランダ、イギリスの海外進出の文脈の中で整理したものです。ワンピースネタがまだまだ通用するようで、助かりました。本当は台湾の鄭氏や明末清初の海洋政策の流れも踏まえたかったのですが、不勉強がたたって断念しました。うまく組み込む視点を考えないといけません。それでも、少しでも歴史総合っぽくするために、三浦按針についてはきちんと触れておきました。

来週は1の最後で「啓蒙の世紀ー18世紀」をテーマにします。ヨーロッパ人が太平洋島民をどうみたのかという点について、学問体系の再編の文脈から整理して行く予定です。ワンピースでいえば、現地住民と外部からやってきた「植物学者」との関係を描いた「空島編」にも関わる内容になりそうです。

 

歴史総合は、試行錯誤の繰り返しですが、まずは「つながる」楽しさを味わってもらえればと思っています。

 

宮古島研修、2018年9月12日―14日「久松五勇士」

今年の9月12日―14日、西洋近現代史ゼミ研修として、宮古島に行ってきました。ゼミ生による共同研究の一環で、今年のテーマは「久松五勇士の顕彰方法・内容をめぐる記憶継承について(仮)」。日露戦争時に、バルチック艦隊宮古島付近に接近したという情報を、久松地区の漁夫たちが電信基地のあった石垣島まで伝令に行った、という事実が1920~30年代に国語読本の教材になったり、日本海軍による顕彰行事の対象になったりして、そのなかで「勇敢さ」や「日本への忠誠心の現れ」がたたえられてきた歴史があります。下記の写真は、1966年に建立された顕彰碑です。

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 宮古島の観光案内では、この碑のみがかろうじて紹介されておりますが、敷地内には、他にも80周年記念碑、100周年記念碑もあります。二日目の午前には、宮古島市立図書館城辺分館にある郷土史コーナーで、文献・資料調査を行いました。宮古毎日新聞に掲載されている関連記事を収集することもできました。

各時代の文脈のなかで、「久松五勇士」像がどのように変化し、受容されてきたのかを、ローカルな視座と世界史的観点から、今後も引き続き考察していく予定です(世界史的観点をどうするか、まだ私も悩んでいるところです)。

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宮古島市立図書館城辺分館での史料調査の様子。職員の方にも大変お世話になりました。

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宮古島総合博物館の会議室をお借りして、ゼミを開きました。

他にも、久松五勇士とは直接関係ないのですが、宮古島の歴史をより深く学ぶために「国立療養所 宮古南静園」内にある「ハンセン病歴史資料館」を訪問しました。元入所者の語り部の方に様々なご経験をお聞きし、館内の展示資料につきましても、職員の方に丁寧に解説していただきました。学生たちも一生懸命聞き入っていました。「研究することの意味」「歴史を学ぶことの意味」を考えるきっかけにしてほしいものです。もっと時間があれば、敷地内の様々な史跡もめぐることができたのですが、これは来年度以降の課題にしたいと思います。

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最終日は2年前にも訪問したドイツ文化村へ。訪問した3日間は、天気にも恵まれました。

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☆ おまけ ☆

合間に、前浜ビーチで海風を堪能。

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古民家を利用した食事処「島どうふ 春おばぁ」で食べた「ワーブ二汁」。とてもボリュームがあっておなかいっぱいでした。

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目の前の学生(院生)は、骨汁に挑戦していました。とても頑張っていました。

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二日目朝には早起きして、ホテル近くのパイナガマビーチでの朝涼み。まあ涼しくはなかったけど。最近集めているキャンプ用品を使ってコーヒーを入れて、一人優雅な時間も過ごしました~。あさキャン△?

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アメリカ滞在記、2018年夏

8月21日から9月4日までワシントンD.C.に滞在し、アメリ国立公文書館で史料調査を進めておりました。今回は1940年代の米海軍太平洋艦隊司令部を紐解き、グアムやマリアナ諸島、他旧日本委任統治領に対する軍政統治関連史料を閲覧・撮影してきました。グアム軍政統治に関する月報も見つかり、なんとか収穫はありました。ただ同じ史料の複写版が、沖縄県公文書館にも所蔵されていることが滞在中に分かり、事前調査の大切さを痛感しました…。

また、太平洋島嶼地域関連の海軍史料は、サンフランシスコの分館にも所蔵されているようなので、次回また科研費が取れれば、次は米西海岸ですね。

 

公文書館が閉まる週末は、基本ホテルに引きこもって史料整理を行いましたが、初めて訪問したアフリカン・アメリカン歴史文化博物館は、圧巻の広さでした(他の博物館も広いけど)。

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訪問者も極めて多く、整理券がないとは入れません。近世期の展示では、左右の側に、それぞれアフリカの視点とヨーロッパの視点からの展示/説明を配置して、中央の柱に「アトランティックヒストリー」の視点で両側を結ぶという展示構成になっていて興味深ったです。他、アメリ黒人史を色取るさまざまな出来事や人物の説明で充実していました。前期の「西洋史史料講読という授業で学生達と読み進めた文献に頻出するベイヤード・ラスティンという黒人運動家(絶対的平和主義者で、1950年代初頭にデュボイスのストックホルムアピール署名活動を支えたり、60年代にはキング牧師を支える人物で、同性愛者であるということから「スキャンダル」にもなった人物)のパネルも大きく展示されていて、勉強・復習になりました(日本におけるアメリカ黒人史研究においては、恐らくはそこまでメジャーではなさそうです。勘違いだったらすいません💦)

 

ワシントンD.C.滞在中の食事は、シリアル(朝)、公文書館の食堂(昼)、コンビニか外食(夜)というパターンで、朝シリアルに変えたことで、前回滞在時(毎日朝マック)よりは節約できたものの、次回は自炊できる宿を探してみたいと思います。

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(アメリカ先住民博物館のフードコートの民族料理。クミンが効いてて美味かった…)
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(ペンタゴンシティ駅と連結するショッピングモール内のフードコートのアジア料理。鶏肉の味付けがちょっと甘めでした)

 

最後の写真は、ミュージアムショップ等でゲットしたお土産品です。来年のオープンキャンパスでの展示対策の一環です。高校生たちの興味関心をかきたてることができれば良いのですが。特にアメリカ・インディアン博物館で購入した「先住民族の権利に関する国連宣言」ポスターは私の研究室の入り口に貼っております。沖縄でアメリカ史を学ぶとはどういうことなのかを常に自分自身に問いかけていくつもりです。

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私は所詮ただの「虚仮」ですが、沖縄でアメリカ史/西洋史を学ぶことの意味を追求するという「一念」を貫いていきたいと思う次第です。

 

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来週12日〜14日は、宮古島ゼミ研修。それまでに滞っている各種仕事をなんとかこなしていきます💦