We shall overcome ☆沖縄からのグローカルヒストリー☆

琉球大学西洋近現代史研究室を担当する池上大祐の教育・研究活動ブログです。アメリカと太平洋島嶼地域との関係について、(脱)・(新)・(核の)植民地主義の観点から研究しています。また、沖縄で西洋史やグローカルヒストリーを学ぶ意義・方法について歴史教育実践を通じて追求していく予定です。なお本ブログの記事は、あくまでわたくし個人の意見であり、所属先の方針や考えを代表するものではありません。

後期新科目「歴史総合」始まる

後期から新設科目「歴史総合」が始まりました。新学部である国際地域創造学部1年次が主な対象で、2年次以上の旧カリキュラム適用学生(彼らは法文学部)の「西洋史概論Ⅱ」との併設で開講しています。

4年後の新学習指導要領を見越しての科目設置で、日本史、東洋史西洋史琉球/沖縄史をうまく接続できるような内容構成を意識してなんとか進めています。

とはいえ、全領域・全地域を網羅することは15回の講義では難しいので、私の研究対象でもある「太平洋」という場に注目し、大きく3つに時期区分して構成してます。

1、太平洋の「発見」-16〜18世紀

2、太平洋の「分割」-19世紀〜20世紀初頭

3、太平洋の「破壊」-20世紀中頃〜

もともと長年、共通教育「西洋の歴史と文化」で行ってきた授業内容で、「西洋史っぽくない」という感想ももらっていたこともあって、ごっそり歴史総合のほうの内容にしてみた、ということです。

今は上記の1の時期について扱っているところで、昨日は「海賊の世紀ー17世紀」というテーマで話ました。私掠船によるスペイン銀船隊への襲撃という動向を、オランダ、イギリスの海外進出の文脈の中で整理したものです。ワンピースネタがまだまだ通用するようで、助かりました。本当は台湾の鄭氏や明末清初の海洋政策の流れも踏まえたかったのですが、不勉強がたたって断念しました。うまく組み込む視点を考えないといけません。それでも、少しでも歴史総合っぽくするために、三浦按針についてはきちんと触れておきました。

来週は1の最後で「啓蒙の世紀ー18世紀」をテーマにします。ヨーロッパ人が太平洋島民をどうみたのかという点について、学問体系の再編の文脈から整理して行く予定です。ワンピースでいえば、現地住民と外部からやってきた「植物学者」との関係を描いた「空島編」にも関わる内容になりそうです。

 

歴史総合は、試行錯誤の繰り返しですが、まずは「つながる」楽しさを味わってもらえればと思っています。

 

宮古島研修、2018年9月12日―14日「久松五勇士」

今年の9月12日―14日、西洋近現代史ゼミ研修として、宮古島に行ってきました。ゼミ生による共同研究の一環で、今年のテーマは「久松五勇士の顕彰方法・内容をめぐる記憶継承について(仮)」。日露戦争時に、バルチック艦隊宮古島付近に接近したという情報を、久松地区の漁夫たちが電信基地のあった石垣島まで伝令に行った、という事実が1920~30年代に国語読本の教材になったり、日本海軍による顕彰行事の対象になったりして、そのなかで「勇敢さ」や「日本への忠誠心の現れ」がたたえられてきた歴史があります。下記の写真は、1966年に建立された顕彰碑です。

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 宮古島の観光案内では、この碑のみがかろうじて紹介されておりますが、敷地内には、他にも80周年記念碑、100周年記念碑もあります。二日目の午前には、宮古島市立図書館城辺分館にある郷土史コーナーで、文献・資料調査を行いました。宮古毎日新聞に掲載されている関連記事を収集することもできました。

各時代の文脈のなかで、「久松五勇士」像がどのように変化し、受容されてきたのかを、ローカルな視座と世界史的観点から、今後も引き続き考察していく予定です(世界史的観点をどうするか、まだ私も悩んでいるところです)。

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宮古島市立図書館城辺分館での史料調査の様子。職員の方にも大変お世話になりました。

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宮古島総合博物館の会議室をお借りして、ゼミを開きました。

他にも、久松五勇士とは直接関係ないのですが、宮古島の歴史をより深く学ぶために「国立療養所 宮古南静園」内にある「ハンセン病歴史資料館」を訪問しました。元入所者の語り部の方に様々なご経験をお聞きし、館内の展示資料につきましても、職員の方に丁寧に解説していただきました。学生たちも一生懸命聞き入っていました。「研究することの意味」「歴史を学ぶことの意味」を考えるきっかけにしてほしいものです。もっと時間があれば、敷地内の様々な史跡もめぐることができたのですが、これは来年度以降の課題にしたいと思います。

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最終日は2年前にも訪問したドイツ文化村へ。訪問した3日間は、天気にも恵まれました。

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☆ おまけ ☆

合間に、前浜ビーチで海風を堪能。

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古民家を利用した食事処「島どうふ 春おばぁ」で食べた「ワーブ二汁」。とてもボリュームがあっておなかいっぱいでした。

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目の前の学生(院生)は、骨汁に挑戦していました。とても頑張っていました。

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二日目朝には早起きして、ホテル近くのパイナガマビーチでの朝涼み。まあ涼しくはなかったけど。最近集めているキャンプ用品を使ってコーヒーを入れて、一人優雅な時間も過ごしました~。あさキャン△?

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アメリカ滞在記、2018年夏

8月21日から9月4日までワシントンD.C.に滞在し、アメリ国立公文書館で史料調査を進めておりました。今回は1940年代の米海軍太平洋艦隊司令部を紐解き、グアムやマリアナ諸島、他旧日本委任統治領に対する軍政統治関連史料を閲覧・撮影してきました。グアム軍政統治に関する月報も見つかり、なんとか収穫はありました。ただ同じ史料の複写版が、沖縄県公文書館にも所蔵されていることが滞在中に分かり、事前調査の大切さを痛感しました…。

また、太平洋島嶼地域関連の海軍史料は、サンフランシスコの分館にも所蔵されているようなので、次回また科研費が取れれば、次は米西海岸ですね。

 

公文書館が閉まる週末は、基本ホテルに引きこもって史料整理を行いましたが、初めて訪問したアフリカン・アメリカン歴史文化博物館は、圧巻の広さでした(他の博物館も広いけど)。

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訪問者も極めて多く、整理券がないとは入れません。近世期の展示では、左右の側に、それぞれアフリカの視点とヨーロッパの視点からの展示/説明を配置して、中央の柱に「アトランティックヒストリー」の視点で両側を結ぶという展示構成になっていて興味深ったです。他、アメリ黒人史を色取るさまざまな出来事や人物の説明で充実していました。前期の「西洋史史料講読という授業で学生達と読み進めた文献に頻出するベイヤード・ラスティンという黒人運動家(絶対的平和主義者で、1950年代初頭にデュボイスのストックホルムアピール署名活動を支えたり、60年代にはキング牧師を支える人物で、同性愛者であるということから「スキャンダル」にもなった人物)のパネルも大きく展示されていて、勉強・復習になりました(日本におけるアメリカ黒人史研究においては、恐らくはそこまでメジャーではなさそうです。勘違いだったらすいません💦)

 

ワシントンD.C.滞在中の食事は、シリアル(朝)、公文書館の食堂(昼)、コンビニか外食(夜)というパターンで、朝シリアルに変えたことで、前回滞在時(毎日朝マック)よりは節約できたものの、次回は自炊できる宿を探してみたいと思います。

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(アメリカ先住民博物館のフードコートの民族料理。クミンが効いてて美味かった…)
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(ペンタゴンシティ駅と連結するショッピングモール内のフードコートのアジア料理。鶏肉の味付けがちょっと甘めでした)

 

最後の写真は、ミュージアムショップ等でゲットしたお土産品です。来年のオープンキャンパスでの展示対策の一環です。高校生たちの興味関心をかきたてることができれば良いのですが。特にアメリカ・インディアン博物館で購入した「先住民族の権利に関する国連宣言」ポスターは私の研究室の入り口に貼っております。沖縄でアメリカ史を学ぶとはどういうことなのかを常に自分自身に問いかけていくつもりです。

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私は所詮ただの「虚仮」ですが、沖縄でアメリカ史/西洋史を学ぶことの意味を追求するという「一念」を貫いていきたいと思う次第です。

 

         ☆

来週12日〜14日は、宮古島ゼミ研修。それまでに滞っている各種仕事をなんとかこなしていきます💦

西洋史研究室前期打ち上げ☆

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今日は西洋史研究室前期打ち上げでした!

もともと人数の多い4年次はなかなか忙しく、連絡の行き違いもあったようで全員は揃わなかったのですが、歓談を通じて前期の疲れを癒すことができたのではないかと思っております。

車で移動する学生が大半ということと、もともと酒をあまり飲まないということで、3年次の提案で、今回は焼肉!大変美味しゅうございました。こんな回もアリですねー。

また今日は正式なゼミ配属前の2年次も来てくれました。今後の西洋史研究室の発展が楽しみです。

             ☆

学生たちからこぞって小説『銀河英雄伝説』を読んだ方が良いと勧められたので、大人買いしてみようと思います!

 

翁長知事の訃報に寄せて

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この数日間の激動に、私自身の思考がまだ追いつきません。「売国奴」「中国の手先」呼ばわりしてきたネトウヨたちは、翁長知事の死を嬉々として喜んでいる言説を吐き出しているそうです。これが日本という社会の惨状です。

 

当然、翁長県政を神格化する必要はありません。実際に、辺野古新基地承認「撤回」が遅すぎで「間接的に新基地建設に加担している!」という批判(表現のえげつなさはともかくとして)も多く目にしてきたし、理屈としては私も分かっているつもりです。それでも、今朝の沖縄タイムスの記事で紹介されていましたが、「朽ち果てた手綱で6頭の馬を操っているようなもの」という蔡倫の言葉で「政治」を例えた翁長知事のこれまでの歩みに、沖縄にきたばかりの私は勇気付けられてきましたし、沖縄の歴史の重さへの自覚のなさを反省させられてきました。

 

ツイッターなどのSNSでも全国の研究者やジャーナリストたちも追悼の意を表明し、民主主義を貫く姿勢の大切さを翁長知事の生き方から見出そうとしています。ただ、翁長さんが「知事になった」のではなく、「知事にした」のは県民の皆さんの意志です。つまり、我々市民の意志で民主主義を作るということを貫くことができる(仲井真のときのように裏切られる可能性もありますが)、という原点を今一度確認する必要があると思います。

 

今こそ、翁長知事の訃報を悼んでくださっている全国の市民一同は、自分たちの足元(各地域・選挙区)で、あるべき民主主義を見出して欲しいと思います。翁長知事を神格化・ヒーロー化する必要はありません。我々市民の意志で、民主主義を貫いてくれそうな人を地方行政・国政に送り込む、という基本に立ち返りましょう。

 

まだうまく言葉にできませんが、すくなくとも「国民に主権があるのが間違い」という人間、「ナチスの手口を真似ればよい」という人間、「LGBTは生産性がない」という人間が国会になぜ存在できるのか、ということをちゃんと考え直したいと思います。

明日から京都!

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先日、同僚の日本史の先生から梨を頂きましたー。

レポート採点や事務仕事の合間に研究室でさばいてさっそく食しました。瑞々しくて、爽やかな気分になれました!

 

さて明日から6日まで歴史教育者協議会京都大会に参加し、最新の歴史教育実践を学んできます。特に「歴史総合」を意識した実践がいくつかあるので、色々吸収したいと思います。ただ、沖縄よりも断然暑いようなので、その対策も考えねば。

 

10月には、沖縄教研集会で、ゼミでやっている共同研究について報告させていただくことに。「高大連携歴史教育研究会」についてももっと沖縄で広めていきたいという野心もあり、どんどんアピールしていこうと思います!

 

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(おまけ)ここ最近の昼食はこれ。カツカレーは3分で食べ終わるのに、このシリアルは10分くらいかかります。普段いかに噛んでないかよくわかります。今月後半の渡米の際も、基本はこれにするつもりです。CVS(アメリカのコンビニ)でもよく売ってますし。

◆2018年度琉球大学オープンキャンパス・地域文化科学プログラムのご案内◆

www.u-ryukyu.ac.jp

明日、7月14日(土)は琉球大学オープンキャンパスです。

多くの高校生のご参加をお待ちしております!

 

☆高等学校の地理歴史、中学社会の教員を目指す方!

学芸員をとって、文化財行政に携わりたい方!

☆地理学・歴史学・考古学・人類学・民俗学を専門的に貫いてみたい方!

☆課題を発見し、それの解決に向けた調査方法のノウハウを学びたい方!

琉球大学

   ⇒国際地域創造学部

      ⇒「地域文化科学プログラム」へ

         (旧・地理歴史人類学専攻課程)

私は当日、「歴史学サロン」でみなさんに歴史学分野(+西洋史学)について説明いたします!以下はスライドの表紙です。先取りして公開します!

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琉大オープンキャンパス2018 地域文化科学プログラム「歴史サロン」

 

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私も高校生のときにはご多聞にもれず、目標を見失い、進路に随分と悩みました(高2のときは文系250人中240番前後の成績でした)。それでも、大学で歴史を勉強したいという原点に戻り、なんとか受験を乗り切ることがなんとかできました。「好きなこと」を貫く楽しさ(もちろん辛いこともあります)を、ぜひ将来みなさんと共有していきたいと思っています!