We shall overcome ☆沖縄からのグローカルヒストリー☆

琉球大学西洋近現代史研究室を担当する池上大祐の教育・研究活動ブログです。アメリカと太平洋島嶼地域との関係について、(脱)・(新)・(核の)植民地主義の観点から研究しています。また、沖縄で西洋史やグローカルヒストリーを学ぶ意義・方法について歴史教育実践を通じて追求していく予定です。なお本ブログの記事は、あくまでわたくし個人の意見であり、所属先の方針や考えを代表するものではありません。

地理歴史人類学専攻課程⇒地域文化科学プログラム

www.grs.u-ryukyu.ac.jp

平成30年4月より、学部改組にともなう新学部がスタートします。

文科省から正式に認可をうけ、着々と準備が進められています。

 

現行 法文学部人間科学科地理歴史人類学専攻

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  国際地域創造学部国際地域創造学科地域文化科学プログラム

 

と、なります。

これまで培ってきた専門性に裏打ちされたカリキュラム体系を維持しつつ、他プログラム(経済、観光、経営、国際言語)の知見も摂取することで汎用性も育成していくことを主眼としています。本プログラムでは、これまでどおり、中学社会・高校地歴の教員免許、学芸員資格、GIS学術士の取得が可能です。

 

年次進行は大まかに以下のような流れとなります。

<1年次~2年次前期>幅広く複数分野の学問的基礎力を習得する。

※最初はプログラムに配属されないので進路選択や学修について不安なこともあるかもしれませんが、いわゆる「クラス担任制」(本学では「年次指導教員」という呼び方になっています)が整っており、いつでも相談できる仕組みになっております。何を学びたいのか、問題意識を鍛えておく大切な期間です。

 

<2年次後期~>所属するプログラムへの配属

※原則的には学生の希望に応じた配属になりますが、各プログラムの目安となる配属人数の上限を超える場合には、1年次~2年次前期までの成績によるセレクションが行われる予定です。

 

<3年次前期~>所属するプログラム内の各ゼミへの配属

歴史学、地理学、考古学、人類学、民俗学の各ゼミに所属し、卒業論文作成の準備がスタートします。いよいよ、本格的な専門的研究活動のスタートです。卒論執筆は、大変ですが、やりがいのある大きな作業です。学生のみなさんにとっては人生で最初の自分の「作品」となります。ぜひ、一緒にがんばりましょう!

どんな教員がいるのかは、以下を参照してください。

学科紹介 : 人間科学科 : 地理歴史人類学専攻課程 – 琉球大学 法文学部

 

高校生の方、読んでくれるかな・・・。

 

石垣島研修 with Typhoon ( 2017年9月12~14日)

先日、西洋史近現代史ゼミを中心として石垣島に行ってきました。

目的は、ロバート・バウン号事件(1852年)と八重山戦争マラリアのついての調査および史跡訪問です。

 

下の写真は、名蔵湾南側の岬にある「唐人墓」。ロバート・バウン号に乗っていた苦力(中国人労働者)たちが船内で反乱を起こして、石垣島に上陸したのち、この地で亡くなった128名を弔っている場所。1970年に石垣市と台湾の連携で、建立されたとのこと。

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その唐人墓の傍らには、太平洋戦争中に日本軍が殺害した米軍捕虜の慰霊碑もあります。

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次に訪れたのは、バンナ公園内にある「八重山戦争マラリア犠牲者慰霊之碑」。この周辺には様々な戦友会の慰霊碑がありました。行ってみないとわからないものです。唐人墓も含めて、こうした記念碑建立=記憶化のプロセス自体も、分析対象になりそうです。

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他にも、石垣市八重山博物館、八重山平和祈念館を訪問しました。ちなみに、以下の写真は、石垣島ゆるキャラ「ぱいーぐる」。南(ぱい)と八重山の天然記念物のカンムリワシがモチーフのようです。

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初日の最後は、ホテル近くの「石垣島ヴィレッジ」の中の石垣島鶏のお店へ。観光地とあって少し割高でしたが、一本一本の焼き鳥はとてもおいしかったです。

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しかし、二日目の13日は台風の影響で一日中ホテル待機。他の多くのお客さんが雑談しているなか、ホテルのロビーでゼミを行いました(写真を撮り忘れた)。この日はみんなで買っておいたカップ麺や缶詰、そしてホテルからの無料配布されたカレーでしのぎました。

 

そして最終日には、ロバート・バウン号が沈没した崎枝湾、石垣―台湾をむすぶ電信所の跡地、ミンサー工芸品店を訪問しました。特に電信(海底ケーブル)の歴史は「地域」からグローバル・ヒストリーを描いていくための興味深い素材となりそうです。米軍による銃撃の跡も戦争の歴史を感じさせます。

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最後に、せめてビーチには降り立ってみようということで、一枚。波は荒かったです。

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・・・という、台風に遭いながらも、充実した研修調査旅行でした。

ここでの経験を、今後のゼミ活動に活かしてほしいと願っています。

西洋史ゼミ・前期打ち上げ!

昨日は、ゼミの前期打ち上げ会でした!

安里界隈の中華居酒屋を学生が見つけてくれて、リーズナブルでかつおいしゅうこざいました(写真撮り忘れた・・・)。ただ、学生も琉大近辺、那覇界隈、中部、南部と居住地域がばらばらで、夜10時ごろには公共交通機関もほぼ使えない状況で、どこを会場にすべきかいつも迷います。今後は、車での移動も考えて、飲むことよりも旨いもんを食べにいく路線での企画もアリかなぁと思った次第です。

 

来月は、9月12日~14日は「石垣島のなかの世界史」発掘プロジェクトによる現地フィールドワークを予定しています。夏期休業中とはいえ、卒論や共同研究に向けた夏期課題もありますが、基本はときに羽を伸ばしてしっかりと充電してもらいたいと思います。

 

私は、残念ながら今夏は渡米する余裕がないので、粛々と自分の仕事をこなす日々になりそうです。

 

シンポジウム/研究会3DAYS

今週末は、シンポジウム/研究会3DAYS!

(1)グアム研究

7月22日(土)は、グアムから研究者を招へいしたシンポジウム。わたくしも参加している科研による企画です。登壇するわけではないのですが、全編英語なので、ある程度英語でちゃんと質問できるよう準備しておかねば。自分の科研でも、アメリカのグアム統治を研究しているので、それにも活かしたい。

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(2)アメリカ分析

7月23日(日)は、シンポジウム「トランプ政権180日と沖縄」でパネリストのひとりとして登壇します。私は「歴史的視点」からの考察を担当し、「歴史にみるトランプ政権―「ジャクソニアン」の系譜と「西漸運動」―」と題する報告を行います。実証研究の成果ではなく、あくまで考えるための一素材を提供する、というで未熟ながらも整理してみました。以下の琉球新報7月14日付けの文化面に、シンポの紹介文を書かせていただきました。

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琉球新報社からご提供いただきました。半年後に本写真は削除します。]

 

(3)歴史教育

7月24日は沖縄国際大学南島文化研究所主催の「シマ研究会」にて、コメンテイターとして登壇いたします。ここでは、歴史教育に関する自分の経験や考えをもとに、議論できればと思っています。

【南島研】第201回 シマ研究会「石垣市教育委員会副読本中止問題について」を開催いたします。|南島文化研究所 | 沖縄国際大学

 

それぞれ異なるテーマですが、「沖縄」という視点をもつことで、何かしら通底するものも見えてくるかもしれません。とにかくがんばります。

琉球大学オープンキャンパス (2017年7月15日)

www.u-ryukyu.ac.jp

 

7月15日(土)琉球大学オープンキャンパスが開催されます。

平成30年度からの学部改組に伴って、私の所属も以下のように変わる予定です。

 

 法文学部人間科学科地理歴史人類学専攻課程

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 国際地域創造学部国際地域創造学科地域文化科学プログラム(予定)

 

グローバル/ローカルな視点を兼ね備え、地域社会の課題解決にとりくめる人材育成をめざすというのが新学部の大まかなコンセプトです。観光、経営、経済、国際文化言語などの知見も複合的に摂取できる仕組みを新たに創るとともに、これまで旧「地理歴史人類学専攻課程」で培ってきた専門性の高い教育研究システムも、新「地域文化科学プログラム」でしっかりと維持しています。教員メンバーも変更ございません(教員と専門領域は以下を参照)。

学科紹介 : 人間科学科 : 地理歴史人類学専攻課程 – 琉球大学 法文学部

 

新プログラムでも、これまでどおり、以下の3つの学問領域を複合的にまなぶことができます(卒業論文はどれかひとつの分野を追究していくことになります)。

・地理学(人文地理学、自然地理学、地誌学)

歴史学(日本史、世界史[東洋史学、西洋史学])

・人類学(社会人類学、考古学、民俗学

◆取得可能な資格:教員免許(中学社会、高校地歴)、学芸員、GIS

 

ぜひ、オープンキャンパスをご活用ください!!

(高校生の方が本ブログみてるかどうかわかりませんが・・・。)

 

第12回九州西洋史学会若手部会の開催(2017年7月1日)

来る7月1日(土)、九州西洋史学会若手部会(第12回)が福岡大学にて開催されます。福岡大学九州大学、そして、うちの琉球大学の学部生が参加します。

※チラシは以下からダウンロードできます。

第12回若手部会チラシ.pdf - Google ドライブ

 

琉球大学からは、西洋史近現代史ゼミメンバーによる共同研究「沖縄のなかの世界史発掘プロジェクトー石垣島を中心にー」を報告いたします。報告といっても、本格的な研究はこれからで、「今後、こういう基本文献をもとにこういう事例を中心に調べていきたい」という構想発表に近い内容になります。

教員や公務員を目指す学生が多いので、「地域の視点とグローバルな視点」の双方をきちんと持ったうえで、専門性と汎用性を身につけてもらいたい、という趣旨ではじめた共同研究。昨年度は、宮古島のドイツ文化村や博愛記念碑について調査・研究をおこないました。学生それぞれの卒論テーマとはまったく別ものなので、きっと大変だろうと思いますが、なんとか頑張ってもらいたいと思います。夏期休業中には、実際に石垣島へフィールドワークに行く予定です。

まあ、理屈はさておき、「石垣島に行ってみたい!」というプリミティブな興味関心や動機も大切で、それも尊重し、楽しみながら進めていく予定です。かくいう自分もまだ行ったことがないので楽しみです。

 

大田先生のご逝去

先日の大田先生の訃報にふれ、大田先生に名誉顧問として参画いただいていた東アジア共同体・沖縄(琉球)研究会事務局担当として、告別式への供花の手配、会員への追悼文の配信などを行いました。

east-asian-community-okinawa.hatenablog.com

私が沖縄に来た一年目(2015年度)の5月に琉球民族独立総合研究学会の公開シンポジウムに参加したときに、大田先生の力強い基調講演を拝聴する機会を得ました。それから、いろいろなご縁から上記研究会の立ち上げ・事務局を担当することになり、その過程で、昼食をご一緒させていただいたこともございました。その後僭越ながら、拙著をお送りしましたら、手書きのご返事をいただきました。今年からは、大田先生が運営されている「沖縄国際平和研究所」の会員として登録させていただいておりました。

私にとっては、このくらいの接点しかございませんでしたが、今後とも大田先生のご著書のみならず、92年間貫いてきた先生の生き方にも学んでいきたいと思います。

 

皮肉なことに、昨日から今日にかけて、太平洋戦争へとまい進していくことになるひとつの契機となった「治安維持法」の可決さながらに、いわゆる「共謀罪」が参議院で強引に可決されようとしています。今日6月15日は、安倍晋三の祖父・岸信介政権期、60年安保反対運動のなかで、国会前で、東大生の樺美智子さんが機動隊員に囲まれたことで亡くなった日でもあります。

 

今一度、母校の西洋史ゼミの後輩たちが懸命に研究した「熱狂する安保と三池」や「東アジア連帯の模索」を読みなおそうと思います。

www.hou-bun.com