We shall overcome ☆沖縄からのグローカルヒストリー☆

琉球大学西洋近現代史研究室を担当する池上大祐の教育・研究活動ブログです。アメリカと太平洋島嶼地域との関係について、(脱)・(新)・(核の)植民地主義の観点から研究しています。また、沖縄で西洋史やグローカルヒストリーを学ぶ意義・方法について歴史教育実践を通じて追求していく予定です。なお本ブログの記事は、あくまでわたくし個人の意見であり、所属先の方針や考えを代表するものではありません。

『西洋史ゼミ論集』の発行

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西洋史研究室では、昨年度からゼミ論集の刊行を開始しました。

右側が昨年度の創刊号、左側が今年度の第2号です。卒業論文全文、卒論・就活体験記、ゼミ活動の紹介などを収録しています。特に第2号は、今度西洋史研究室に入ってくる予定の2年次生に一からすべて編集してもらいました。

 

さて、卒業論文を書くためには、色々考え方はあるとは思いますが、基本、以下の作業が必要になります。

・テーマの選定

・先行研究の整理

・文献、史資料の収集・読解

・論理的な説明、叙述

・オリジナリティのある結論の提示

 

大学の専門的知識は社会では役に立たない、とよく言われますが、たしかに「知識」そのものは活用されることはないかもしれません。しかし、上記の卒論執筆のプロセスを、企業での商品開発に当てはめてみるとどうでしょうか。

・テーマの選定 ⇒ 新商品に関する着想

・先行研究の整理 ⇒ 類似商品・関連商品に関する調査、ニーズに関する市場調査

・文献、史資料の収集・読解 ⇒ 新商品開発に必要な材料、資源、情報の確保

・論理的な説明、叙述 ⇒ 社内でのプレゼン資料の作成

・オリジナリティのある結論の提示 ⇒ 新商品開発のメリットを社内で説得

このように考えてみれば、西洋史学の卒業論文を書いて、企業に就職するというキャリアパスも十分にあり得るのではないでしょうか。むしろ、外国語文献を徹底的に読み込むので、企業マニュアル、各種取説の翻訳といった仕事でも貢献できるかもしれません。

 

そもそも、この学問は将来に役にたつのか?という疑問自体がナンセンスであり、学ぶ者が、「役に立たせよう」とするかどうか次第だともいえます。だからこそ、私は、就職に有利かどうかー役にたつかどうかーではなく(そもそも、そんかことは分かりようがない)、深く学びたいと思う学問を遠慮なく、思い切りやってほしいと思っています。

 

このゼミ論集に寄せてくれた、卒業生による卒論・就活体験記を読んで、本当に勇気づけられました。ぜひ、社会でも頑張ってほしいです。

 

・・・さて明日から、いよいよ新年度。

Guam, Gun Beach

先日のグアム調査の際に、デジカメの録画機能をつかって、宿泊地から徒歩15分くらいの「ガン・ビーチ」を録画しました。

 

ブログに、各種ファイルをアップロードする技術を習得したつもりですので、試しに活用してみようということで、さっそく張り付けてみました。うまくいくかな・・・。1分程度の動画です。今後はこういうのも、授業スライドに入れ込みながら、展開できればと思っています。

Guam, Gun Beach, 2017.2.28.AVI - Google ドライブ

 

 

 

2016年度西洋史研究報告会

2月22日、23日の二日間にかけて、大学内で「西洋史研究報告会」を開催しました。専攻の公式行事の卒論報告は一人5分で質疑なし、ですので、せっかくの作品をちゃんと披露する機会を設けようと、もう一人の同僚の西洋史の先生と相談し、企画したものです。そこでメインの4年生は、報告1時間・質疑1時間という時間をとって、じっくり議論しました。

 

続けて、3年生の卒論進捗状況、2年生の関心あるテーマなどの議論もつづき、「耳学問」の大切さも感じえてもらえたのではないか、と思います。ただ、この時期は集中講義、インターンシップ、教員セミナー等のイベント事もおおく、すべての西洋史学生が参加なかったのが残念でした。今の学生は、僕らの頃より忙しくなっているのは確かですね・・・。今年は諸事情でバタついたので、より計画的な企画が必要。

 

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大北口あたりの寒緋桜。1~2月は桜の季節。

 

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打ち上げの様子。お疲れ様でした!

The Last Lecture on 18, February, 2017

今日は、おなじ歴史学コースの同僚である山里純一先生(ふだんは固有名詞は極力明記しないようにしていますが、今回は特別編です)の最終講義および退職記念パーティーが開催されました。

 

山里先生は、①日本古代財政史研究、②古代南島関係史研究、③まじない習俗の研究の3つの柱から研究を進めてこられ、近著で本日ご恵贈いただいた『沖縄のまじない』(ボーダーインク、2016年)を含めて計6冊の単著を世に問うてこられました。正倉院関連文書の読み解きから、木簡研究、呪符や石敢當研究へ至り、これからは星や風と沖縄習俗との関係を歴史民俗学的手法でさらに研究を進められるという決意を、最終講義で分かりやすく、お話ししてくださりました。最後には、「星」に関連のある、八重山民謡を三線とともに唄っていただく、という豪華な演出を披露してくださいました。退職パーティーでは、長らく山里先生が顧問をつとめられた八重山芸能研究会による演奏が、会に花を添えてくださいました(そのうち1名は今後の私のゼミ生!)。

 

私個人との関係については、たった2年間ではございましたが、これまで先生が沖縄で日本古代史を研究する意味を模索してこられた34年間の蓄積を引き継ぎ、巨人の肩に乗る小人のように、微力ながらも沖縄で西洋史を研究する意味について同じく模索していきたいと決意新たにした次第です。

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ゼミのオリエンテーション、卒論報告会

今日の午前中、私のゼミに入る予定の新3年生へのオリエンテーションを行いました。今年は5名ということで例年になく多くなります(例年とはいえ、まだ来年度で3年目ですが・・・)。この春休みの間に、関心のあるテーマのついての文献リストを作成してもらい、新年度から具体的なテーマ設定を行っていきます。現時点では、イギリス産業革命、アメリカ文化史、フランス革命史、戦後沖縄(とアメリカ)、新植民地主義という大まかなキーワードに関心があるそうな。さらに踏み込んで、どんな研究があるのかをまずは知ってほしいです。

 

午後からは4年生の卒論報告会&3年生企画の「留送会」(アルコールなしの追い出しコンパのようなもの)。卒論報告会では一人5分の持ち時間で、全員(今年は30名弱)発表します。いろんなテーマがあるなぁと、耳学問を楽しみました。しかし、たった5分では質疑応答もできないので、西洋史ゼミでは来週にゼミ合宿を企画し、4年生には学生最後の報告ということで、がっつり報告してもらう予定。

 

それにしても「2月は逃げていく」は本当だ・・・。仕事がたまる一方。「4月には死んでしまう」かも・・・。

歴史教育・大学教育の未来

昨日31日に、うちの「教育実践演習」の1コマをお借りして、歴史教育講演・座談会を開催しました。北海道の通信制高校で教鞭をとられ、長らく教科書作成・歴史教材作成に携わってこられた先生にお越しいただき、様々な知見を学生たちと共有しました。

テーマは、

・「歴史総合」新設の経緯と今後の展望

・歴史教材作成のためのデジタルアーカイブズの活用方法

・北海道からみた世界史、という枠組み

・美術館・博物館との連携

・「アクティブ・ラーニング」、ICT教育の本質

と多岐にわたり、情熱的にお話いただきました。そもそも教師自身が「楽しんで」語っているのかどうか、が大切だ、というメッセージは、私たち大学教員も自覚しなくてはならないことだと再確認した次第です。

 

そして、うれしい出会いも。

講演してくださった先生が非常勤講師として教科教育法を教えている大学の学生さんも、このタイミングに合わせて来沖し、一緒に議論させていただきました。「思い付き」でピョンヤンに旅行にいく、というアクティブな方で、「人間」の本質を理解しようとする姿勢に感銘を受けました。また、大学に入ってから勉強に目覚めたそうで、大学もまだまだ可能性がある、と勇気づけられました。今後のご活躍に期待しております。うちの学生たちとも交流したいとおっしゃっていただいていたのですが、目下期末試験やレポート提出を抱えている事情で、それが叶わなかったのが少し心残り。

 

・・・という地道な活動を南の地で、なんとか進めております。以下のチラシは、「高大連携歴史教育研究会」共催のシンポジウムです。しっかりとフォローしたいと思います。

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科研費研究会の開催(2017年1月27日)

 

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明日27日に上記内容の科研研究会を開催します。

小笠原群島・硫黄列島という島嶼地域の歴史や社会状況から、透けて見える「帝国秩序」(大日本帝国からアメリカ「帝国」へ)の論理とは何か。そしてその論理に埋もれてきた人々の声とはどのようなものか。西洋史、アメリカ史という枠にとらわれない自由な発想と、現代的問題関心によって新たしい知見を得たいと思います。

 

この科研では、私はグアム(やマリアナ諸島)における戦争記憶とアメリカ統治との関係について研究する予定です。目下、1960年代の南太平洋戦没者慰霊費建立をめぐってアメリカ・グアム・日本三者の(政治的)意図がどのように絡むのかを明らかにする予定です。

2月末には、一週間ほどグアムへ調査に行く予定です。昨年に「グアム博物館」が再建されたので、そこにもしっかりと足を踏み入れたいと思います。