We shall overcome ☆沖縄からのグローカルヒストリー☆

琉球大学西洋近現代史研究室を担当する池上大祐の教育・研究活動ブログです。アメリカと太平洋島嶼地域との関係について、(脱)・(新)・(核の)植民地主義の観点から研究しています。また、沖縄で西洋史やグローカルヒストリーを学ぶ意義・方法について歴史教育実践を通じて追求していく予定です。なお本ブログの記事は、あくまでわたくし個人の意見であり、所属先の方針や考えを代表するものではありません。

2016年度西洋史研究報告会

2月22日、23日の二日間にかけて、大学内で「西洋史研究報告会」を開催しました。専攻の公式行事の卒論報告は一人5分で質疑なし、ですので、せっかくの作品をちゃんと披露する機会を設けようと、もう一人の同僚の西洋史の先生と相談し、企画したものです。そこでメインの4年生は、報告1時間・質疑1時間という時間をとって、じっくり議論しました。

 

続けて、3年生の卒論進捗状況、2年生の関心あるテーマなどの議論もつづき、「耳学問」の大切さも感じえてもらえたのではないか、と思います。ただ、この時期は集中講義、インターンシップ、教員セミナー等のイベント事もおおく、すべての西洋史学生が参加なかったのが残念でした。今の学生は、僕らの頃より忙しくなっているのは確かですね・・・。今年は諸事情でバタついたので、より計画的な企画が必要。

 

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大北口あたりの寒緋桜。1~2月は桜の季節。

 

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打ち上げの様子。お疲れ様でした!

The Last Lecture on 18, February, 2017

今日は、おなじ歴史学コースの同僚である山里純一先生(ふだんは固有名詞は極力明記しないようにしていますが、今回は特別編です)の最終講義および退職記念パーティーが開催されました。

 

山里先生は、①日本古代財政史研究、②古代南島関係史研究、③まじない習俗の研究の3つの柱から研究を進めてこられ、近著で本日ご恵贈いただいた『沖縄のまじない』(ボーダーインク、2016年)を含めて計6冊の単著を世に問うてこられました。正倉院関連文書の読み解きから、木簡研究、呪符や石敢當研究へ至り、これからは星や風と沖縄習俗との関係を歴史民俗学的手法でさらに研究を進められるという決意を、最終講義で分かりやすく、お話ししてくださりました。最後には、「星」に関連のある、八重山民謡を三線とともに唄っていただく、という豪華な演出を披露してくださいました。退職パーティーでは、長らく山里先生が顧問をつとめられた八重山芸能研究会による演奏が、会に花を添えてくださいました(そのうち1名は今後の私のゼミ生!)。

 

私個人との関係については、たった2年間ではございましたが、これまで先生が沖縄で日本古代史を研究する意味を模索してこられた34年間の蓄積を引き継ぎ、巨人の肩に乗る小人のように、微力ながらも沖縄で西洋史を研究する意味について同じく模索していきたいと決意新たにした次第です。

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ゼミのオリエンテーション、卒論報告会

今日の午前中、私のゼミに入る予定の新3年生へのオリエンテーションを行いました。今年は5名ということで例年になく多くなります(例年とはいえ、まだ来年度で3年目ですが・・・)。この春休みの間に、関心のあるテーマのついての文献リストを作成してもらい、新年度から具体的なテーマ設定を行っていきます。現時点では、イギリス産業革命、アメリカ文化史、フランス革命史、戦後沖縄(とアメリカ)、新植民地主義という大まかなキーワードに関心があるそうな。さらに踏み込んで、どんな研究があるのかをまずは知ってほしいです。

 

午後からは4年生の卒論報告会&3年生企画の「留送会」(アルコールなしの追い出しコンパのようなもの)。卒論報告会では一人5分の持ち時間で、全員(今年は30名弱)発表します。いろんなテーマがあるなぁと、耳学問を楽しみました。しかし、たった5分では質疑応答もできないので、西洋史ゼミでは来週にゼミ合宿を企画し、4年生には学生最後の報告ということで、がっつり報告してもらう予定。

 

それにしても「2月は逃げていく」は本当だ・・・。仕事がたまる一方。「4月には死んでしまう」かも・・・。

歴史教育・大学教育の未来

昨日31日に、うちの「教育実践演習」の1コマをお借りして、歴史教育講演・座談会を開催しました。北海道の通信制高校で教鞭をとられ、長らく教科書作成・歴史教材作成に携わってこられた先生にお越しいただき、様々な知見を学生たちと共有しました。

テーマは、

・「歴史総合」新設の経緯と今後の展望

・歴史教材作成のためのデジタルアーカイブズの活用方法

・北海道からみた世界史、という枠組み

・美術館・博物館との連携

・「アクティブ・ラーニング」、ICT教育の本質

と多岐にわたり、情熱的にお話いただきました。そもそも教師自身が「楽しんで」語っているのかどうか、が大切だ、というメッセージは、私たち大学教員も自覚しなくてはならないことだと再確認した次第です。

 

そして、うれしい出会いも。

講演してくださった先生が非常勤講師として教科教育法を教えている大学の学生さんも、このタイミングに合わせて来沖し、一緒に議論させていただきました。「思い付き」でピョンヤンに旅行にいく、というアクティブな方で、「人間」の本質を理解しようとする姿勢に感銘を受けました。また、大学に入ってから勉強に目覚めたそうで、大学もまだまだ可能性がある、と勇気づけられました。今後のご活躍に期待しております。うちの学生たちとも交流したいとおっしゃっていただいていたのですが、目下期末試験やレポート提出を抱えている事情で、それが叶わなかったのが少し心残り。

 

・・・という地道な活動を南の地で、なんとか進めております。以下のチラシは、「高大連携歴史教育研究会」共催のシンポジウムです。しっかりとフォローしたいと思います。

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科研費研究会の開催(2017年1月27日)

 

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明日27日に上記内容の科研研究会を開催します。

小笠原群島・硫黄列島という島嶼地域の歴史や社会状況から、透けて見える「帝国秩序」(大日本帝国からアメリカ「帝国」へ)の論理とは何か。そしてその論理に埋もれてきた人々の声とはどのようなものか。西洋史、アメリカ史という枠にとらわれない自由な発想と、現代的問題関心によって新たしい知見を得たいと思います。

 

この科研では、私はグアム(やマリアナ諸島)における戦争記憶とアメリカ統治との関係について研究する予定です。目下、1960年代の南太平洋戦没者慰霊費建立をめぐってアメリカ・グアム・日本三者の(政治的)意図がどのように絡むのかを明らかにする予定です。

2月末には、一週間ほどグアムへ調査に行く予定です。昨年に「グアム博物館」が再建されたので、そこにもしっかりと足を踏み入れたいと思います。

 

書評『新しい日米外交を切り拓く』

www.okinawatimes.co.jp

 

紹介が遅くなりましたが、1月7日の沖縄タイムスに書評を書かせていただきました。

学術書以外の書物を評したのは今回が初めてで、すでに出ている他紙の書評も読みつ、切り口をいろいろと模索しました。まずはきちんと内容に寄り添ってまとめ、それから、本土出身で沖縄在住の現代史研究者という自分の立場から何が言えるのかをなんとか考えてみました。

ここはおそらく、同じ問題意識を共有していると感じたからです。

ぜひ、ご一読されてください。

 

新年スタート

年末年始休暇中に、ただ堰き止めていただけの仕事を粛々とこなしていたら、もう半月が経ってしまいました。今年もなにとぞよろしくお願いいたします。

 

<西洋近現代史ゼミ>

昨年11月末に報告させていただいた学生による共同研究報告「ドイツ商船R・J・ロベルトソン号漂着事件における「博愛美談」再発見ー宮古島・日本・ドイツー」をきちんと活字にするために、基本的な先行研究の整理をゼミで行っています。テキストは以下の4本の論文。

・近江吉明「世界史論の歩みからみた「グローバル・ヒストリー」論」『歴史評論』741号、2012年、50~60頁。

・木畑洋一「歴史学におけるグローカルな視座」『グローカル研究』No.2、2015年、113-120頁。

村井章介「古琉球から世界史へ―琉球はどこまで「日本」かー」羽田正編『地域史と世界史』ミネルヴァ書房、2016年、13~39頁。

・渡辺美季「1872~73年の那覇ーイギリス船べレナス号の遭難事件からみた「世界」ー」羽田正編『地域史と世界史』ミネルヴァ書房、2016年、153~178頁。

一次資料へのアクセスが難しい分、こうした先行研究をきちんと踏まえて、具体的な諸事実を解釈する力を身に着けてもらいたいと思います。今年の3月31日までに、脚注をつけて提出してもらう予定。先行研究を踏まえる、脚注をつける、論文を組み立てるという作業は、きっと1年後の卒論執筆に生かされることでしょう。

来年度も、ひきつづき「沖縄のなかの世界史」発掘プロジェクトは継続していきます。次の具体的テーマは、どうすべきかいろいろ悩み中・・・。ハンセン病、移民、食文化、音楽・・・。新たに入ってくる予定のゼミ生と相談しつつ決めていきたいと思います。

 

<沖縄での「初詣」>

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自宅からやや近い「普天間宮」。琉球八社のひとつで、琉球古神道神が祀られているという。ニライカナイは「異世界」という意味らしい。沖縄民俗の基本くらいは勉強しなきゃなー。

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ちなみに、神社のすぐ裏手は、米海兵隊キャンプ・フォースター。