We shall overcome ☆沖縄からのグローカルヒストリー☆

琉球大学西洋近現代史研究室を担当する池上大祐の教育・研究活動ブログです。アメリカと太平洋島嶼地域との関係について、(脱)・(新)・(核の)植民地主義の観点から研究しています。また、沖縄で西洋史やグローカルヒストリーを学ぶ意義・方法について歴史教育実践を通じて追求していく予定です。なお本ブログの記事は、あくまでわたくし個人の意見であり、所属先の方針や考えを代表するものではありません。

第11回九州西洋史学会若手部会のお知らせ(11月27日開催@福岡)

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きたる11月27日(日)、九州西洋史学会若手部会が開催されます。九州を中心に各地の大学から結集した学生たちが卒論・修論の内容について発表します。私のゼミメンバーは、ちょっと趣向を変え、共同研究として発表させていただくことになりました(2部会ぶちぬきの枠をいただいて恐縮です・・・)。

 

ちょいちょい僕がヒントを出しつつ、学生たちが話し合って設定したタイトルは、「ドイツ商船R・J・ロベルトソン号漂着事件における「博愛美談」再発見ー宮古島・日本・ドイツー」となりました。今、必死に組み立てているようです。学生にとっては、きつい苦行かもしれませんが、よい経験になることを信じて、がんばってほしいと願うばかりです。他の報告論題も、とても面白そうで、こうした同世代たちの報告からも、色々と学び取ってほしいと思っています。

 

(ただ、教員からのメッセージは、なかなか学生には伝わらないものだと痛感することも多く、きっと昔の私も、同じように先生方をやきもきさせていたのだろうと、過去を反省するばかりです・・・。)

 

 

移民資料展「ウチナーンチュの世越の肝心」

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2016年10月27日から、第6回世界のウチナーンチュ大会が開催されるにあたり、沖縄県立博物館・美術館では、特別企画移民資料展「ウチナーンチュの世越の肝心」が開催されています。さっそく昨日,見に行きました。

 

19世紀末から戦後にかけて、多くの沖縄からの移民が、ハワイ、南米、東南アジア、南洋群島などへわたり、各地でコミュニティを形成してきた歴史が分かりやすく説明されていました。1929年当時では、移民からの沖縄への送金額が、沖縄県の総収入の66%を占めていたということで、その影響力の大きさにびっくりしました。

 

南米移民の父と言われる、金武町出身の當山久三氏のイニシアチブも重要だったようです。彼は謝花昇とともに自由民権運動にかかわり、沖縄県選出の議員にもなった人です。43歳の若さで亡くなったのですが、ハワイにも彼の胸像が建立されているそうです。

 

海外とのつながりを求めた、という点では、同じく自由民権運動に加わり、孫文辛亥革命を支援した新垣弓太郎(第二次大戦後には沖縄独立論を唱える)と志を共有していたのかもしれません。人的交流があったのかどうかも気になるところです。

 

ゼミでやっている「沖縄のなかの世界史」発掘プロジェクトの来年度のテーマにしようかな。

 

 

 

 

 

勝連城跡でローマ帝国・オスマン帝国銅貨が発見される

表題に関する記事が、9月27日付けの琉球新報沖縄タイムス両紙の1面で取り上げられたことから、せっかく沖縄にいるのなら、ということで現地に行ってみました。下写真は、銅貨が発見された勝連城跡(現在のうるま市)です。

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勝連城の概要については、下記のパネルをご参照。なお件の銅貨が発見された「四の曲輪(くるわ)」は、調査発掘作業中ということで、立ち入り禁止でした。

 

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さて、件の銅貨は、勝連城跡近くの与那城歴史民俗資料館で、開催中の「平成28年度発掘速報展」にて展示されておりました。

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ただ、残念ながら展示中のコインの撮影は禁止ということでしたので、私なりに、1セントコインと10円玉をつかって大体の大きさを示しつつ、以下のように展示を再現してみました。

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・・・後期の「西洋史概論Ⅱ」の初回授業の教材として使うつもりですが、なんだか小学生か中学生の自由研究のようになってしまいました・・・。

それはともかく、新聞報道や展示の説明では、発見された10点のうち、製造年代が判明したのが5点。4点が3~4世紀のローマ帝国時代、1点が17世紀のオスマン帝国時代とのこと。他の銅貨については現在も調査中とのこと。

もうひとつの論点は、なぜ勝連城跡で発見されたのか、という点。14~16世紀「大交易時代」の琉球とアジア・ヨーロッパ地域との交易の在り方や、15世紀後半の廃城後の勝連城の活用のされ方の解明にもつながる、と識者はみているようです。

したがって、琉球ローマ帝国が直接つながっていた!、という類でなく、あくまで中世から近世にかけての東アジア交易網が、いかにグローバルな広がりをもっていたのか、そしてそのなかで、琉球の位置づけは何だったのか、という点が、今後の論点となりそうです。

また、私以外にも、新聞をみてコインがみたくて来た、という方々も同資料館にいらしてて、歴史学・考古学の研究成果が市民に開かれていく、という地味ではあるけれども大切な営みの一部を垣間見ることができました。これからも、わたくしなりに「沖縄のなかの世界史」という視点をもっともっと鍛えていきたいと思います。

 

宮古島調査研修旅行☆2016.9.14-16

西洋史ゼミ研修旅行で、宮古島へ行ってきました。

目的は、「宮古島のなかの世界史」を発掘すること。具体的には、19世後半のドイツ商船遭難を契機としたドイツー宮古島ー日本ー世界を取り結ぶ歴史をひもとくため、「うえのドイツ文化村」や、海難事故に関する石碑を巡ってきました。

左のお城は、文化村内のマルクスブルク城を模した博愛記念館。ここにはドイツにまつわるさまざまな美術品や展示品もあり、歴史文化を学べる内容になっていました。

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宮古島総合博物館では会議室をお借りして、研究会を開催。夏季休業中に学生たちがそれぞれ役割分担(先行研究の論文要約担当、自治体史担当、同時代の記録文献担当など)を決めており、その成果を発表しあい、どのように統合すればよいかを検討しました。この成果は、秋の九州西洋史学会若手部会で発表させていただく予定です。

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せっかくの宮古島訪問なので、ほか、有名なスムージのお店にいったり、砂浜でちょいと遊んだり、夜中は学生たちから「人狼ゲームをしましょう!」ということで、「騎士」になったり、「占い師」になったり・・・。ゼミ旅行の要素も少しは取り入れたつもりです。学生が探してくれた居酒屋の食事も最高に美味かったですっ。

 

最終日の早朝には、島の東南端の東平安名崎にて、朝日を拝みました。

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学生がまなざす方向に、豊かな未来が待っていることを祈念しつつ、また引き続きゼミを盛り上げていきたいと思います。

 

 ☆

17日、18日は、明治大学での日本アメリカ史学会へ。

ちゃんと飛行機が飛ぶことを祈ります・・・。

 

 

 

 

公開シンポ「東アジア共同体と沖縄の未来」(9月11日開催@琉球大学)

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今週末の日曜日、上記のシンポが開催されます。

東アジア共同体」はいかにして可能かー。あらゆる知見を結集させ、未来を展望していきます。わたくしも、「アジア主義」をめぐる歴史について関心があり、アメリカ現代史という専門分野を超えて、「世界史」という観点から、アジアと沖縄をつなげていきたいと思っています。

 

手前みそですが、ポスドク時代にお手伝いしておりました福岡大学西洋史ゼミの共同研究の一環で、「東アジアの連帯」という観点から、近代日本の帝国主義朝鮮半島・台湾・沖縄との関係について学生たち自らの研究成果があります。以下の拙監修本の第10章をぜひご覧ください!

地域が語る世界史

地域が語る世界史

 

 

 

 

28日からKirksvileへ

ワシントンDCでの史料収集を終え、明日からセントルイス経由で、カークスヴィルに行きます。そこにはトルーマン州立大学があり、そこの図書館に、ジョン・コリア(John Collier)文書(マイクロフィルム)が所蔵されているので、それを閲覧しにいきます。はじめての国内移動で、I am very nervous...! 気をつけていってきます。

 

昨日は、調査後に、公文書館で一緒になった先生方と夕食にいきました。シカゴ風のピザ(deep dishというらしい)、美味い!5人でいったのですが、けっこうすぐに、お腹いっぱいになりました。それがこれ!こんなピザ、「美味しんぼ」でしかみたことがない・・・。

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そして今日は、ネイティブアメリカン博物館にいってきました。前回も行ったはずが、重要な展示ブース(アメリカとインディアンの関係史)を見落としてたみたいで、それをゆっくりと見て回りました。

 

前述したジョン・コリアは、内務省インディアン局長として、F・ローズヴェルト政権期の「インディアン・ニューディール」を支えた人物で、戦後には辞職し、次にグアム人民の人権擁護のための言論活動を展開します。そこで、「先住民政策」というキーワードから、アメリカと太平洋島嶼地域の歴史をつなげてみたいと思った次第です。実際、この博物館にはハワイの歴史に関するブースもあり、多面的に歴史をみようとするスミソニアンの問題意識が垣間見れます。

 

また、ここの博物館の特徴がカフェテリアが、先住民の居住地域がごとの料理があることです。僕はバッファローバーガーを食べてみました。それがこれ⇩

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・・・まあ、肉は肉でした・・・。作りおきで冷めている上に、ちょい高めなんで、全般的に微妙・・・。

 

なんだか食レポっぽい記事ですが、うまくいかないこともありながらも、なんとか史料収集に奮闘している毎日です。

 

さて、今から、明日の飛行機乗り継ぎがうまくいくよう、英語の想定問答集を作っておかねば。予約はしているので大きな問題はないかと思いますが。しかも宿泊先がモーテルであることにさっき気づいたけど、車なくても大丈夫ですよね・・・。

ワシントンDCでの史料収集活動

I got over jetlag finally!

渡米して5日目の夕方。これまで時差ボケで、この時間帯が一番きつかったのですが、やっと今日落ち着いて、まともな夕飯を食べることができました。

 

さて現在、アメリカ国立公文書館別館(National Archives Ⅱ:メリーランド)に通って、史料収集に励んでおります。毎朝、公文書館本館(DCモールあたり)から、無料のシャトルバスに乗って約50分かけて移動。本館の写真は以下のとおり、荘厳な造りです。

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あとに建てられた別館は、もっとモダンな感じです。

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前回、卓上の史料を上から撮影する際、腕が疲れ果てた経験から、今回は「新兵器」を導入。カメラ用固定アームです!

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目線の高さもばっちりで、座ったままでぶれなく撮影できています。原資料のホッチキスの止め方で文字が奥まって見えにくいときは、空いている片手で開いておくことも可能。作業がはかどります。

 

さて、肝心の集めている史料についてですが、今回は徹底して、「グアム」に絞り込んで、前回集めきれなかった内務省文書(RG126)のほか、海軍作戦本部長文書(RG38)、海兵隊文書(RG127)、海軍作戦部隊文書(RG313)、海軍省文書(RG428)、太平洋陸軍文書(RG550)を調べています。特に、日本軍を平定した後の1944年夏以降のグアム内での米軍の動きを追っているところです。幸いにも、海兵隊文書のなかに、グアム部隊の「War Diary」があったので、これが今のところ一番有益になりそうです。この調査は、戦後沖縄の基地化のプロセスをかなり意識しています。

 

この史料収集過程については、後期の「アカデミック・リテラシー」(1年次必修科目)でも若干お話しするつもりです。

引き続き、がんばります。