We shall overcome ☆沖縄からのグローカルヒストリー☆

琉球大学西洋近現代史研究室を担当する池上大祐の教育・研究活動ブログです。アメリカと太平洋島嶼地域との関係について、(脱)・(新)・(核の)植民地主義の観点から研究しています。また、沖縄で西洋史やグローカルヒストリーを学ぶ意義・方法について歴史教育実践を通じて追求していく予定です。なお本ブログの記事は、あくまでわたくし個人の意見であり、所属先の方針や考えを代表するものではありません。

オープンキャンパスのあり方を考える

7月16日(土)に琉球大学オープンキャンパスが開催されました。

わたくしも、所属する専攻の「歴史学コース」の取り組みの一環として「西洋史学」のブースを設置し、40~50名の高校生に対し西洋史の文献の種類、卒論テーマの決め方などを、パネルをつかって説明しました。

ただ、質問を受け付けてもなかなか出ず、何かぼーっとただ佇んでいるだけの印象をうける生徒もいたり、なんとなく「砂漠に水をやる」感じがぬぐえず、こちらの説明内容がずれているのか、高校生の問題意識が希薄なのか、まだ答えがでないまま・・・。西洋史に関心がある人がブースに来るという方法ではなくて、6~7名くらいのグループごとに、「日本史」⇒「東洋史」⇒「西洋史」⇒「学生相談室」を15分ごとに巡回するという方法で進めているので、その影響もあるのかもしれないが。

もともと「総合的な学習時間」を利用して、高1、高2の参加率が高い傾向にあると聞いていたが、実際には半数が高3だったので、もっと目がキラキラしててもいいのだが・・・。

もちろん、数名は西洋史に関心ありそうな生徒もいて、県外から来てくれた学生もいたのは大変うれしかったです!

 

来年は、今回の反省を生かして、もっと説明内容を変えてみよう。受験勉強のコツみたいなのも必要なのかなー。・・・そもそも私立文系だった自分にできるかどうか不明だが。

 

 

 

 

 

 

ビブリオバトルに参戦!

7月17日(日)、九州大学箱崎キャンパスにて「九州西洋史学会若手部会☆ビブリオバトル」が開催されました。

 

ご承知のことと思いますがビブリオバトルとは、5名前後のグループごとに各人5分ずつの持ち時間を使って、読んできた文献を「魅力的」にプレゼンし、そのグループ内投票で、もっとも魅力的だった本を「チャンプ本」として決めていくバトルのことです。今回は、17名のバトラーと10名くらいのギャラリーの参加があり、わが琉球大学からも4名の学生がバトラーとして参戦しました。

 

中世史、近世史、現代史、テーマ史など多岐にわたる分野から文献が紹介され、どれも興味深かったのですが、一番印象に残ったのが、九大生が紹介してくれた『キノコの歴史』(シンシア・バーテルセン著)。そのなかで日本は「キノコ好きの国」に分類されているそうな。たしかに思い起こせば、キノコをたべて体が大きくなるゲームが人気を博したり、「きのこの里」が突然食べたくなったり、「きのこっのっこーのげんきのこ」というCMが流行ったりと、日本でのキノコ文化はそれなりに歴史がありそうだと感じました。また、この本を選んだバトラーの着眼点が面白かった。大学での部活動中に、ふとフィールド上に生えているキノコをみつけ、「なんでこんなところに?」と思ったことがきっかけだったそうな。おしくもチャンプ本にはなりませんでしたが、見事な着想でした。

 

他、『ハンナ・アーレント』、『ヒトラーとナチ・ドイツ』、『大衆宣伝の神話』など、ドイツ現代史関係の著作が多かったのも、現代を象徴しているのだな、と痛感させられました。

 

なお、今回チャンプ本に輝いたのは、以下の4つ。

高坂正堯『現代史の中で考える』新潮選書、1997年。

・高橋友子『路地裏のルネサンス中央公論新社、2004年。

・潮木守一『ドイツ近代科学を支えた官僚』中央公論新社、1993年。

池上俊一動物裁判講談社、1990年。

 

表彰では、チャンプ本を紹介したバトラーだけではなく、ギャラリーによる評価が高かった本(『路地裏の大英帝国』)に送る「ギャラリー賞」、いい質問をした「ベストクエスチョン賞」も用意。琉大からは3名が受賞!事前に練習してきた人とそうでない人の「差」もこの結果に反映されているようです。まあ、それはともかく、他大学との交流ができたことが一番の財産になったかと思います。

 

秋は、共同研究発表としてまた参戦する予定です!

 

 

 

 

太平洋核実験70年

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今月の7月24日に、「太平洋核実験70年」と題する企画が開催されます。

基調講演される竹峰誠一郎先生から、本企画についてご紹介いただき、わたくしも出席することにいたしました。

 

1946年7月1日は、ビキニ環礁での原爆実験「クロスロード」作戦が行われた日です。2011年の日本アメリカ史学会にて、クロスロード作戦にともなうビキニ住民の移住の問題にアメリカ海軍(1947年7月から信託統治政府の主体となる)の「自治」概念を絡めながら、冷戦初期の文化的政策の一側面を追った報告(未熟でしたが・・・)をさせていただいて以来、ちょっとこの課題からは離れておりました。

 

日本では、当然のことながら、第五福竜丸が被曝した1954年の「キャッスル作戦」に関する関心が高く、それはとても大切なことですが、1946年から1954年に至るまでも、アメリカは、クロスロード作戦、サンドストーン作戦、グリーンハウス作戦、アイビー作戦を展開しながら、マーシャル諸島内のビキニやエニウェトクを「実験の島」に作り替えていきました。このあたりの実態解明も、実はまだこれからの課題ではないかと思っておりますので、そのとっかかりとなる本企画から、いろいろと学びたいと思います。

 

ご関心のある方へ、ぜひ周知のほど、よろしくお願いいたします。

 

 

 

 

 

 

高大連携歴史教育研究会に関するイベント情報

www.kodairen.u-ryukyu.ac.jp

 

今週末の6月25、26日に、高大連携歴史教育研究会第3部会・第4部会・第5部会合同中間研究会が東京大学駒場キャンパスにて、開催されます。

 

私も、担当している共通教育科目「西洋の歴史と文化」で、”太平洋からみた西洋史”と銘打って、どうにか新しい工夫ができないものか、日々模索しているところです。少なくとも、「板書しまくって、しゃべりつくして、脱線して、チャイムがなったら、続きは次週!」のような、伏線だけちりばめて回収できないでいる週刊連載漫画ような授業のやり方を反省し、毎回ワークシートというわけにはいかないけど、少しでも学生の能動的な作業を増やそうとしています。どのような工夫がありえるのか、私もしっかりと学びたいと思います。

 

~~~~~~プログラムは以下~~~~~~~~~~~~

<2016年6月25日(土)>

第5部会研究会「大学の教養教育と教員養成を考える―高大接続の入口と出口」(仮)」

タイムテーブル

 14:00-14:15 岩井淳・問題提起
 14:15-14:45 三田昌彦「教養教育としての世界史講義の試み」
 14:45-15:15 戸川点報告(タイトル未定)
 15:15-15:45 中村武司「地方国立大学の歴史教育の現状と課題─弘前大学の事例から」
 15:45-16:00 休憩
 16:00-16:30 松井秀明「歴史教育と歴史学をつなぐ試み―2年間の地歴教員養成講座を振り返って」
 16:30-17:00 桃木至朗「研究と教育をつなぐ歴史学入門講義」
 17:00-18:00 全体討論

 

<2016年6月26日(日)>

第3部会・第4部会研究会「必修科目「歴史総合(仮称)」と新テストのあり方を考える」(仮)

タイムテーブル

 13:30-13:40 開会の挨拶 割田聖史

 13:40-14:20 第1報告 木村茂光「歴史総合」について

 14:20-14:50 第2報告 藤村泰夫「歴史総合」について

 14:50-15:00 休憩

 15:00-15:40 第3報告 磯谷正行「新テストについて」

 15:40-15:50 休憩・会場準備

 15:50-17:30 全体討論 司会:割田聖史・君島和彦

 17:30 閉会の挨拶 君島和彦

2016年度 沖縄県歴史教育者協議会総会(6月18日開催)

教材研究の場として私も参加させていただいている「沖縄県歴史教育者協議会総会」が明日開催されます。

 

在日米軍基地が沖縄に集中しているという「特殊性」と、世界中に800以上の米軍基地がある、という「普遍性」をどのように組み合わせて、教材化すべきか。前者を強調しすぎれば、他者理解がおそろかになるし、後者を強調しすぎれば、「基地があるところはみんな我慢している」という安易な受任論を喚起しかねない。

 

こどもたちの発達段階に合わせた「基地教育」(平和教育という文脈と社会科教育という文脈の双方の視点から)の可能性を議論したいと思います。

 

(以下、事務局からの案内文を掲載します)

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2016年度 沖縄県歴史教育者協議会総会のご案内

 

この度、沖縄県歴史教育者協議会では、歴教協全国大会を前に県総会を開催することになりました。この総会では8月にせまった沖縄大会にむけて、「安保を問う」授業実践をどのように構想するのか小学校、高校・大学の授業実践から考える場にします。

海兵隊による事件、綱紀粛正が叫ばれている中での飲酒運転による事故など、私たちは米軍基地、地位協定、安保、そして軍隊とは何かを再度子ども達と学ぶことが求められていると思います。そこで具体的に子ども達の疑問により添った授業実践を学びあいたいと実践報告を中心とした研究会を企画いたしました。

ぜひ多くのみなさんと語り合い、親睦を深める場にしたいと思います。今回の総会は、生活教育サークルの研究会と共催で開催いたします。多くの方のご参加お待ちしています。

 

≪県総会開催要項≫

 日時:2015年6月18日(土) 13:00~17:00

場所:琉球大学教育学部 教106教室

実践報告:「石嶺・沖縄から日本の政治について考えるー小学校における米軍基地学習」

                             (石嶺小学校 下地治人さん)

    :「海兵隊は沖縄で何をしているのかー高校・大学での平和教育実践」

                             (琉球大学非常勤講師 北上田源さん)

分散会:上記の2つの実践報告を受け、沖縄でどのように軍事基地・軍隊・安保について授業をすすめていけば良いか参加者と深めていきたいと思います。

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ビブリオバトル in 九州

f:id:daimayhawks:20160614214522j:plain私が所属する「九州西洋史学会」では、九州圏内を中心に西洋史を学ぶ学部生や院生の交流の場を設け、若手の育成を図ろうということで、2012年に「若手部会」を発足するにいたりました(わたくしも設立・運営に携わっていました)。

【詳細は⇒ 若手部会 をクリック!】

 

このたび、昨年年8月の夏合宿に続き、「ビブリオバトル 歴史のココがおもしろい!第2弾」を下記のとおり開催する運びとなりました。こういう取り組みを行っている、という宣伝もかねて、以下、事務局から送っていただいた案内文を転記します。うちの学生も数名参加する予定です。

 

なお、沖縄でも、他専攻、他大学とのゼミ間交流ができればといいなぁと思っているところです。

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ビブリオバトル 歴史のココがおもしろい!第2弾」

日時:2016年7月17日(日)14時ごろ〜
場所:九州大学文学部会議室
   〒812-8581 福岡市東区箱崎6丁目19番1号

懇親会:場所未定、18時ごろ〜(箱崎周辺)


ビブリオバトルは、プレゼンテーション能力を高めるだけでなく、バトラー(報告者)と聴衆ともに楽しめる企画です。なお、詳細や形式は下記のとおりとなります。

ビブリオバトルとは?
・  「本の紹介コミュニケーション」(知的書評合戦ビブリオバトル公式ウェブサイトより)http://www.bibliobattle.jp/
・  読んで面白いと感じた本を5分間でみんなに紹介してもらいます。
・  歴史学の専門書でなくても、歴史に関する本であるならOKです。
 
② 5分間で何を話すのか?
・  書名/作者/出版社/出版年
・  いつその本に出会ったか
・  その本を選んだ理由
・  その本の「キーワード」、「印象に残った一文」
 
③ 参加する上でのポイント
・  バトラーは学部生と大学院修士課程の方に限定します。
・  原稿を読み上げるのではなく、フリーハンドで本の内容を紹介してください。
・  制限時間(5分)は必ず守ってください。
・  他の人に本の魅力が伝わるような工夫をしてください。
 
④ 形式
・ バトラー4~6名のグループを結成します。
・ 各グループの報告とそれへの質疑応答が終了するごとに、バトラー全員で投票(自分には投票不可)します。
 
⑤ 表彰
・  優勝:バトラーによる投票数の総計により決定します(各グループ1名)
・  ギャラリー賞:ギャラリーの投票で全バトラーの中から1名を選びます(1名)
・  ベストクエスチョン賞:バトラー、ギャラリー含む質問者から運営委員が1名を選びます(1名)
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ゼミ・プロジェクトの段取り

宮古島のなかの世界史発掘プロジェクト」(宮古世界史プロジェクト)に関する予算は、残念ながら付きませんでしたが、手弁当でもよいので、まずは何かひとつ成果をつくりたいということで、プロジェクトそのものは、そのまま進めることにしました。

 

研究の進め方は、以下の4段階を想定しています。

1.文献調査(6~8月)

2.現地調査(9月)

3.分析・比較(10~12月)

4.公表(1~3月)

 

いまは、1の段階を進行中。ゼミの場所を図書館のオープンスペースにし、議論する、本を借りる、複写する・・・という作業を一緒にやっています。西洋史ゼミなのに、「沖縄県史」「上野村誌」などの自治体史をひもとくというのは、珍しいかもしれません。

 

学生自身が、「こういう記述がほしい/をみたい」と自ら見出して、館内を探しまわって、「ありました!」とその発見に興奮するという醍醐味を味わいつつあります。僕も、あらかじめ先(結論)が見えているわけではないので、いっしょに「なんでやろうね・・・?」という疑問を共有しながら、進めていければと思います。

 

2では、ドイツ文化村、宮古総合博物館などの訪問

3では、本テーマに似た他地域の事例と比較しながら、総合作業および中間報告

4では、共同論文として原稿化

を予定。

 

資金援助も含めて、がんばります。